no title,no life

「花、みたいな人ですかね」
歯が浮くようなありきたりな例えだった。案の定先輩は吹き出すように笑い、四ノ宮にはキモ、とドン引きされた。
だけど本当にそう思った。防衛隊に目指す人なんて実力主義、強さを求め続けプライドが高いやつばかり。そんな中で、一際雰囲気が違うと引き寄せられるように目に映ったのは彼女だった。入隊式の日から、保科副隊長の少し後ろでただ立っていた彼女。訓練中も度々姿を見せて、副隊長と少し話して訓練を見学して去っていく。いつも眉を少し下げて目を細めて笑う彼女に、なぜだかどこにいても目で追うようになっていた。
「でも確かに、俺も最初見た時は1人だけ雰囲気違うなとは思ってたわ」
「そりゃ立ち位置的にも医療班だし。まぁ芹沢さん自身が女神みたいだもんね〜。花に例えるとかほんとキザすぎ」
「うっせ!!」
彼女の存在感には先輩や四ノ宮も感じるところはあったらしい。四ノ宮に至っては試験中の治療についてから彼女にはよく懐いている。1番最初に関わったとマウントをとってくる始末だ。ちょっとうざい。それから伊春くんも。そもそも俺や先輩達が惹かれた存在の彼女に他の人も何も思わないわけない。保科副隊長も亜白隊長も彼女には強い信頼を置いているし、他部隊の隊員にもたくさんのファンがいるらしい。彼女はどこにいてもよく話しかけられていていつも笑顔で答えている。
俺も1週間健診で初めて話しただけ。いつも見るような優しい顔で。それを今は俺だけに話していた。
「応援してるよ」
少しだけ、ほんの少しだけその眉が不安そうに下がっていたけれど、彼女は綺麗な声で、顔で笑った。花が、そよ風に揺れてゆらゆら揺れるように。太陽に照らされて、光輝くように。
あぁ、花みたいだと。素直にそう思った。


「おいレノ!」
「伊春くん、すみません、いまから用事あるんで」
「あいつも懲りないねぇ」


訓練所の束の間の休息。合間を見つけては彼女の元へ向かう。

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