あるとき、ふと思った。
ユラがこの町……アンブローズを出て行ってしまったら、どうしようって。彼女は好奇心が強いから、外の世界にいつか興味を持つかもしれない。この町を出ていくなんて事前に知らせようものなら、きっとボーが黙ってない。そのことをユラだってわかってる。だから、出ていくときは何も言わず、出て行ってしまうだろう。
「どうしたの、ヴィンセント。なんか、さっきから変じゃない?」
ユラが僕の顔を覗き込む。
「気のせいだよ」
「本当に?」
そういって、ユラがいつもみたいにまっすぐ僕を見るから、僕はすべてを見透かされてしまっているような気持になって、君に何でも話してしまう。
「……なんか、君がいつかアンブローズを出て行っちゃうんじゃないかって思って」
「ふふ、どこにも行かない。追い出されそうになっても、この町を出て行ったりなんかしない」
「どうして?」
「この町が好きだし、みんなよくしてくれてるし……それに、ヴィンセントがいるから」
ユラの顔は、いつか写真で見た東洋の小型の魚のように赤く染まっていた。
「そ、そうだ! 洗濯物の途中だったの」
ユラはわざとらしくそういうと、部屋を出て行った。
僕も同じだ。この町のこと、ずっと前から好きだった。でも、ユラが来てからもっと好きになった。この町を愛すユラのためにも、もっといい場所にしなくちゃ、そう思ったんだ。
どうして、ユラがいなくなったら、この町を出て行ってしまったら、なんて考えたんだろう。
……。
今の僕には、なによりユラを失うことが恐ろしいから、かな。あの様子だったら、ユラはここにずっといてくれるはずだ。そうだ、みんなでずっと、暮らすんだ……。