「私ね、ヴィンセント……あなたのことが好きなの」
ユラに家に招かれたとき、断るべきだった。ユラの部屋にふたりきり。そのうえ、彼女から告白されるなんて……。
いまさら、僕はユラを好きだったことに気が付いた。もう遅いけど。だって、ずっとボーの恋愛相談に乗ってたんだ。ボーを応援してあげたくて、いろんなアイデアを出した。そうするうちにユラのことを僕も好きになってしまったのか、ボーから相談を受ける以前からユラのことを好きだったのか。今となってはどのタイミングでユラを好きになってしまっていたのか見当もつかない。
「ヴィンセント、聞いてる?」
「うん、聞いてるよ」
ここで、僕も好きだと言えたらどんなにいいだろう。二人で手をつないで森を散歩したり、並んで映画を見たり、一緒にお昼寝したら――きっとすごく楽しくて幸せな気持ちになれるだろう。
「ヴィンセントは? 私のこと、どう思ってる……?」
僕は唇をかんだ。ここでユラに「好きだ」と伝えれば、ボーを裏切ることになってしまう。彼を深く傷つけることになるんじゃないか。
「僕は……妹みたいな存在だと思ってる。大切な家族」
「そっか……なんか、ごめんね。さっきのは忘れて」
彼女は瞳を潤ませながら、それを隠すようにくるりと背を向けた。
「あ、あのさ! 招待しておいて本当に悪いんだけど、今日はもう帰ってもらえるかな? やらなきゃいけないことがあったのを、すっかり忘れてて……」
わずかにユラの声が震えている。
「わかった。またね、ユラ」
僕は立ち上がって、彼女の部屋を後にした。仮面をつけていてよかった。ユラに僕の今にも泣きだしそうな顔を見られずに済んだ。
あれから数日後、いつものようにボーがユラのことを相談しに来た。どうやら、急にユラが優しくなって、デートの約束までできたらしい。胸がざわつく。なんだかイライラする。僕はボーにユラを譲った。でも、それがどういうことなのかこの先長い期間をかけて思い知らされることになるのかと思うと、悔しくてたまらない。正直に気持ちを明かすことができたのなら、こんな思いをせずともすんだのだろうか。