「理不尽だと思うの」
ユラの言葉に、ヴィンセントは作業の手を止めた。
「なにが理不尽なの?」
「ハロウィンよ。トリックオアトリート! ってやつ。どうして悪戯されないためにもてなさなくちゃいけないのかしら。第一、お菓子をあげなかったらどんな悪戯をされるの?」
「僕もあんまり詳しくはないけど、子供のための行事になりつつあるから、かな? 子供はお菓子好きだし。お菓子を用意していない家が生卵を投げつけられるっていうのは聞いたことあるよ」
「ひどいのね、理不尽だわ」とユラ。
「ユラ、トリックオアトリート」
「え? 今日はハロウィンじゃないし、お菓子なんて持ってないわ」
「じゃあ、悪戯させて」
そういってヴィンセントはユラにキスをした。
「い、悪戯って、キス?」
「ううん」
「あの……今日は、ハロウィンじゃないし……」
「嫌? 理不尽かな? ユラがハロウィンの話するから、思いついちゃったことなんだけど、嫌なら……」
「嫌じゃない、けど……理不尽」
そういいつつもユラはほほ笑みながら照れくさそうにヴィンセントに抱き着いた。