ハロウィンの夜、留学先で仲良くなった友人がパーティーに招いてくれたおかげで、ユラはとてもいい思い出ができた。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、気が付けば真夜中を過ぎていた。さすがにお開きにしようということで、みんなそれぞれ帰っていく。男の子がもう遅いから家まで送ると言ってくれたが、家は近いし、その男の子自体友人の友人でよく知らない相手なのでユラは断った。
友人たちと別れると、途端に寂しい気持ちになった。もうハロウィンも終わりなのだ。可愛らしい魔女のコスチュームにお菓子の詰まったカボチャのバケツがかえってむなしく感じる。それに、外は少し肌寒い。自然と、早足になっていた。
人通りもなく、車も通らない。住宅街だが、家の電気も消えている。外灯だけついている家も少なくはない。あたりはしんとしていて、それがなんとも不気味で嫌な感じである。
そんな中、少し先に誰かが立っているのが見えた。こんな時間に何をしているんだろう。まさか不審者だろうか?
だが、家はその人物の先だ。遠回りも考えたが、それこそいつ家に帰れるかわからなくなってしまう。仕方なく、その人物のほうへ歩いていく。すると、シルエットだったその人物が、どうもコートを着て帽子を被った背の高い男らしいということが分かってきた。さらに近くなると、彼は人間らしからぬ容姿をしていた。
ユラはなるほど、と思った。ハロウィンが終わってしまうことに寂しさを感じているのは自分だけじゃなかったのだと思った。また、なんてクオリティの高い仮装だろうとも思った。まるで本物のようだ。
ユラだって仮装したままだ。妙な親近感を覚えたユラは思い切って、彼に話しかけた。
「ハッピーハロウィン!」
トリックオアトリート! と言おうかとも思ったが、どう見ても彼はお菓子を持っていない。彼はじっとユラを見た。ハッピーハロウィンと返してくれない。きっと仮装してなりきっているんだなとユラは勝手に解釈して笑顔でキャンディを差し出した。
「はい、お菓子。お菓子をあげるから、悪戯しないで〜なんてね。ハロウィンってすごく楽しいわよね。でも、私もこれから帰るところだし、名残惜しいのも分かるけど、あなたもそろそろ家に帰った方がいいわよ。それじゃあね」
そういって、ユラはその場を後にした。去っていくユラを彼は見えなくなるまでじっと見ていた。そして、彼女が残していったキャンディを大事そうにコートの内ポケットにしまうと、近くに止めてあったトラックに乗り込み、どこかに走り去っていった。