妹?

 ユラは、今日もらったばかりの誕生日プレゼントをサイドテーブルに置いた。中身が気にはなるけれど、荷物を片付け、手洗いうがいをきちんとしておかなければ、母親に何を言われるか分かったものじゃない。元からユラの母は厳しい人だったが、妹として養子をとってからはいっそう厳しくなった。「エスターが真似するからやめてくれる?」とことあるごとに言ってくるのだ。
 荷物をクローゼットにしまい、手洗いうがいを済ませると、急ぎ足でリビングに戻った。
「ダサい腕時計ね」
 リビングには、ソファに深く座り、怪訝そうな表情を浮かべながら腕時計を見るエスターが居た。
「ああ、エスター……帰ってたのね」
 サイドテーブルを見ると、びりびりに破かれた包装と、腕時計が入っていたらしい箱が無造作に置かれていた。エスターは、サイドテーブルに置かれていたプレゼントを自分宛てのものだと誤解したらしい。
「ダサいけど……受け取ってあげないこともないわ」
「エスター……その、それは……」
 口ではダサいだのなんだの言いながらも、さっそく腕に着け始めたエスターを目にすると、「それはあなたのためのプレゼントじゃない」とは言い出しにくくなってしまった。
 ユラが途中で黙ったのを不自然に思ったのか、エスターは一瞬動きを止めると、突然立ち上がり荒々しく腕時計を床にたたきつけ、それを足で何度も踏みつけた。
「エ、エスター! やめなさい、ケガするわ」
「触らないで! 私のプレゼントじゃなかったんでしょ!? ほかのやつにあげるつもりの、プレゼントだったんでしょ!?」
 エスターはユラを殴りつけた。
「ちがう、ちがうのエスター、やめて痛い……っ! それは私が今日貰った誕生日プレゼントで……」
 エスターはユラを殴る手を止めると、ソファに腰を下ろした。
「ユラお姉ちゃん、隣に座って」
 ユラは恐る恐るエスターの横に腰を下ろした。エスターはユラの頭を優しくなでた。
「殴ったりしてごめんね。痛かったわよね……」
「いえ、いいの……エスター、大丈夫だから……その、私用事を……」
「ダメよ。わかってるくせに。あなたがきちんと、誰にこんなプレゼントをもらったのか言うまでは絶対に逃がさないわ」
「エスターには関係ないじゃない……」
「あら? いいの? そんな口きいて。今日のユラお姉ちゃんちょっと変よ。学校でどんな奴に何を言われたのかしら。……本当はそんなことはどうでもいい。ユラお姉ちゃん……ユラ……こっちを向いて。好きなの。だから、だから……嫌いにならないで……」