「私思うんだけど」
ユラはそう言いながら、いつの間にか部屋の隅に立っていた白いワンピースの女――貞子に近づいていく。貞子の長く前に垂らされた前髪をあげて、ほほ笑んだ。
「ああ、やっぱり。前髪あげたほうが可愛いよ」
貞子の顔がやや赤くなる。そして、ユラの手を払いのけ、ふたたび前髪で顔を隠した。髪の隙間から、貞子がにらみつけてくる。
「そんな顔しても怖くないよ! ……可愛いだけ」
その言葉を聞いた貞子はスーッと消えてしまった。
「シャイなんだから」
そう言いながら、ユラはほほ笑んだ。
あの後、貞子はやってこなかった。気づけばいつもいる彼女が、今日はもう顔を出さないつもりらしい。
「本当のことを言っただけなんだけどな。恥ずかしがり屋さんなんだね」
おそらく、明日にはまたいつものようにくるだろう。夕飯の後片付けを終えると、ユラはシャワーを浴びに、バスルームへと向かった。
一人暮らしを始めてから、すっかりシャワー派になってしまった。衣服を脱ぎ、バスルームの扉を開けると、そこに貞子が立っていた。
「え!? ちょっと、何してるの?」
貞子の白い腕が伸びてきて、ユラの腕をつかんだ。そのまま、バスルームに引きずり込まれてしまう。ユラはバランスを崩し、貞子の胸の中に飛び込む形になってしまった。
「わっ!」
貞子の顔が近い。さらに顔を近づけられ、唇を重ねられる。
「ん……」
そっと貞子の体が離される。
貞子の顔を見ると、目元が少しだけ笑っているように見えた。
「昼間のやり返しのつもり? そんなことしても、可愛いだけだからね」