リビングのソファで寛ぐユラに、ヴィンセントが「ユラ、お風呂空いたよ」と声をかけてくれた。
「ありがとう。少ししたら入ろうかな」
入ると言っても、シャワーだけれど。最近は暑くなってきたのでお湯にがっつりつかりたいとも思わなくなってきた。
「ヴィンセント、まだ髪の毛乾いてないんじゃない?」
ヴィンセントの美しい髪の毛は、まだ少し濡れているように見える。
「そうかな?」
「濡れてると思うよ。そうだ! ねえ、私が乾かしてもいいかな?」
「……いいけど」
「やった!」
ユラはドライヤーを持ってくると、ヴィンセントにソファに座ってもらった。立ったままでは、身長差の問題で髪の毛を乾かすことができない。
ドライヤーを使い始めると、音がうるさいので自然と会話は減る。
「綺麗な髪だなあ……うらやましい」
ユラはぽつりと呟いた。ヴィンセントは何も言わない。ドライヤーの音でユラの言葉が聞こえていないのかもしれない。
「ヴィンセントの子供はきっと、ヴィンセントに似て綺麗な髪の毛なんだろうな……」
ユラは独り言を言いながら、ヴィンセントの髪の毛を乾かし終えた。
「ありがとう。自分で乾かすより、人にやってもらう方が楽だね」
「後ろの方とかは特にそうかもね」
「ねえ、ユラ。お風呂からあがったら、今度は僕がユラの髪の毛を乾かしてあげるよ」
「本当? 嬉しい。じゃあ、お風呂行ってくる!」
そういって、ユラは勢いよく立ち上がり、バスルームへ行こうとした。
「ああ、そういえば僕の髪の毛を乾かしているとき、子供がどうとか言ってたような気がしたんだけど。ユラ、もしかして子供が欲しいの?」
ユラの頬が少し赤くなった。
「そういうことを言ったんじゃないよ……。ただ、ヴィンセントの髪の毛は綺麗だなって」
「ふうん。子供は欲しくないの?」
「……そのうち欲しいかもしれない」
ヴィンセントは悪戯っ子っぽく、満足そうに微笑んだ。