ユラが、アンブローズを去る夢をみた。
年末にユラが、年が明けてから最初に見る夢は「初夢」と言って、重要なものなんだと言っていたのを思い出す。これがその「初夢」なら最悪じゃないか。
「……ユラ、初夢って具体的にどんなもの? ただの夢じゃないの?」
「うーん、そうだなぁ。正夢になりやすいんだったかなぁ。ごめん、忘れちゃった」
「……」
僕が落ち込んでいるのを見て、ユラが心配してくれる。
「もしかして、嫌な夢をみたの?」
「うん……」
「でも大丈夫よ、ヴィンセント。今日は1月1日でしょう。1月2日の夜に見る夢が初夢だよ。それに、嫌な夢をみたら人に話しちゃえばいいの。そうすると、正夢になりにくくなるの」
そう言って微笑むユラが眩しい。思わず「大好き」と言ってしまいそうだ。
「さ、私に話してみて。どんな夢? きっと話せば楽になるわ」
「ユラがさ、アンブローズを出て行っちゃう夢だよ。すごく、悲しかった」
「それは……悲しいわね。私がアンブローズを……ヴィンセントたちのもとを離れるなんて」
ユラまで落ち込ませてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「ごめんね、僕がこんな夢をみなければ……」
「ううん、いいの。私こそごめんね。話せば楽になるとか言っておいて、みんなと離れ離れになることを考えたら悲しくなっちゃった」
「ユラはずっと僕たちと一緒にいるよね?」
「もちろん、ずっと一緒だよ」
その夜、僕はとびきり素敵な夢をみた。
どんな夢かは内緒。だって、正夢にしたいならだれにも話しちゃいけないって、昔聞いたことがあるんだ。
たとえ何があっても僕たちは一緒だ。ずっと一緒なんだ。