会いたい気持ち

 ユラは、今日もビデオチャットであの瞬間を待っていた。名前も知らない誰かが、「笑いのために」を3回チャットで送ってくれるのを。
「……変態ばっか」
 全裸で踊る人、パンツを被っている人……。ユラはため息をつくと、ビデオチャットをログアウトし、ノートパソコンのカバーを閉じた。
「わっ」
 突然テーブルの向こうにスマイリーが姿を現した。今までノートパソコンの陰に隠れていたらしい。嬉しそうにスマイリーが手を振ってくる。
「会いたかったよ」
 スマイリーが手を伸ばしてきた。ユラは、ほほ笑みながらスマイリーの手を取った。
「スマイリーはどうだった? 会いたかった?」
 スマイリーは何も言わない。スマイリーの縫い付けられた笑顔から血がにじむ。彼は話すことができない。だから、いつも行動で示してくれる。今日だって、「笑いのために」と一回もチャットで送られてきていないにもかかわらず、こんな風に会いに来てくれている。正直、スマイリーが会いに来てくれるとは思っていなかった。
 スマイリーはユラの側に来ると、ユラの頬に冷たいナイフを滑らせた。
 試されている……そう感じた。スマイリーも不安なのだと。自分を恐れないか、愛しているか……。
「大好きだよ、スマイリー」
 ユラがそういうと、スマイリーの暖かな手がユラの頬を包み込んだ。