夏休みの姉妹

 エスターが家に来てから、初めての夏休みが終わろうとしていた。
 家族で海にも行けたし、エスターと一緒に参加したサマーキャンプもすごく楽しかった。この夏は、良い思い出ばかりだ……。
「やたら、事故が多かったわねえ」
 母がぽつりとつぶやいた。確かに、行く先々で事故に遭遇した。海で幼馴染みが溺れかけた時は、驚いた。
 幼馴染みは、「エスターだ! エスターに突き落とされたんだ」と主張した。しかし、エスターはその時トイレに行っていたし、私はトイレの前でずっと彼女を待っていた。
 それに、エスターはそんなことをする子ではない。賢くて、妙に大人びたところはあるけれど、大人しい良い子だ。
「気のせいよ、ママ。休みで浮かれてる人が多いから、事故が多かっただけよ」
 母は私の言葉に「そうならいいんだけど」と呟いた。

「エスター、何してるの?」
 エスターはキャンバスに向かって熱心に何かを描いている。可愛らしい後ろ姿。ツインテールがエスターの動きに合わせてゆらゆらと揺れている。
「見ればわかるでしょ。絵を描いてるの」
「なんの絵を描いてるの?」
 エスターが座っていた椅子ごと横に移動すると、キャンバスがよく見えるようになった。
 海だ。海の絵だ。砂浜には楽しそうに遊ぶエスターと私がいる。そして、沖には……。
「溺れて死んじゃえば良かったのにね」
「エスター、あなた……」
 エスターはため息をついた。
「何よ。あなたのためじゃない。それとも、あの馬鹿にずーっとお尻を触らせるつもりだった? それなら、悪いことをしたわね」
「エスター……いいのよ、あなたはそんなことをしなくても。彼は、私がちゃんと殺すから」
 私の言葉にエスターはニヤリと笑った。私たちは碌でもない姉妹。私たちの周りでは事故が絶えない。楽しい夏休み中も、それは変わらない。