まだ早い時間だと言うのに、ユラはべろんべろんに酔っ払っていた。こんなのではいけない――そう思いつつも、男にフられてはハッピーアワーの開始時間から酒をあおる。いつもこの繰り返しだ。
「よぉ、ずいぶん飲んでるな」
顔を上げれば、ボーが眩しいくらいの笑顔を浮かべていた。
「また、フられちゃってね……」
このボーという男のことを、ユラはほとんど知らない。名前はかろうじて知っているが、どこで何を生業としているのか、既婚なのかすら知らないのである。
一つ確かなのは、こんなふうに年がら年中男にフラれては、みっともなくぐずぐずと泣きながら酒を飲んでいる女を相手にする者は、ボーしかいないということだ。そんな物好きが既婚者のはずが無い。それは、ほとんどユラの希望だったけれど――。
「もうやめておけ」
「いいじゃない、もう少し飲ませてよ」
「酒じゃねえよ。適当な男と付き合うことだよ。見てられねえ」
ユラは目を見開いた。ボーがこんな風に叱ってくるのは初めてだった。
「あのねえ、私だってそうしたいわよ。適当な男と付き合ってるつもりなんか全然無いのよ。今度こそは、今度こそはって……」
「へえ」
「じゃあ、あんたが付き合ってくれるの?」
「お前がそう望むならな」
「ほらやっぱり……って、え?」
ボーのトラックの助手席に乗り込んだユラ。隣を見ると、彼がニコニコしている。あれだけ飲んでいたユラが、自分で運転するのは不可能だ。ボーが送ってくれると言うから、彼のトラックに乗り込んだ。自分の車はまあ……あとでなんとかして取りに来ればいい。
「あんた、既婚者じゃ無いわよね」
「独身だよ。まあ……既婚者よりたちが悪いけどな」
「なにそれ、どういう意味? もしかして、ジョーク?」
「そうだ。ほら、もう寝とけ。送ってやるから」
ボーは車を走らせながら、隣で寝息を立てているユラを見た。
「何も知らないで可哀想に。ああ、ちゃんと送ってやるよ。アンブローズにな」