「止まってえ!」
白のSUVはスピードを緩めることなく走り去っていく。ユラは高く上げた手をゆっくりと下ろした。
通り過ぎていったのは、あの車で何台目だろう。あたりはもう暗くなり始めている。圏外の上、バッテリー残量も残り10%になった役立たずのスマホを睨む。
そもそも、大学の男友達の車に乗り込んだのが運のつきだった。彼は「家へ送るよ」と言ったが、いざ車で走り始めると、家どころかどんどん町を離れていく。人気の無い脇道に車を停めると、ユラの服の中に手を入れてきた。ユラが怒って思いっきり彼の横っ面を殴ると、男友達は怒り狂い、ユラを道路に置き去りにした。
歩いて街まで戻るしかないのか。ユラはとぼとぼと歩き始めた。後方から、車の音が聞こえてくる。しかし、どうせまた通り過ぎる……。
「どうした?」
見ると、トラックに乗った男が、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
「友達に置いてかれたの。乗せてくれない?」
「そりゃ、ひでえな。乗りな」
ユラはゆっくりとトラックの助手席に乗り込んだ。
怪しい男だ。怪しい男だけれど、一晩中歩くよりはマシかもしれない。それに、いい人って可能性も……。
「こんな良いからだした女を……ろくでもねえ野郎だ」
前言撤回。男は舐め回すようにユラの身体を見てくる。スカートの裾を引っ張り、少しでも太股を隠す。
「今日は良い肉が手に入ったんだ。食べていくだろ?」
「街で下ろして……」
男が手を振り下ろす。大きな音。男がダッシュボードにナイフを突き刺したらしかった。
「食ってくだろ?」
「……はい」
ああ、どんどん悪い方向に進んでいる気がする。