ユラがその芸術作品を見つけたのは、本当に偶然だった。友達の逃げた猫を追いかけていった先に廃墟があって、その中まで猫を追いかけていった。
「猫ちゃーん。こんな所は入っちゃ危ないよー」
「ニャーン」という声が聞こえたが、姿は見えない。
「もう、どこ行ったの?」
正直、一刻も早くこの廃墟から出たい気持ちでいっぱいだった。だが、廃墟に小さな猫を置いてけぼりにするのも気が引けた。
「猫ちゃーん」
ユラは足を止めた。向うに誰かがいる。立っているのが見えた。古そうなコートに大きな帽子……。もしかしたら、この廃墟を管理している人かもしれない。勝手に入ったことを怒られてしまうかもしれない。
「ご、ごめんなさい。友達の猫を追いかけてて……あの、猫みませんでしたか?」
その人物は何も答えず、ゆっくりとユラに近づいてくる。
「あの! 猫を――」
目の前まで来たその男はぐっと顔をユラに近づけ、においを嗅いだ。
「っ! なに――」
男は顔を遠ざけると、何事もなかったかのように歩き去っていった。
「なんなの……」
一人残されたユラは猫の鳴き声のする方へ向かった。
そこには、たくさんの人間が壁や床にくっついていたり、縫い付けられていたりした。その様は実に不気味だったけれど、手先が器用なもののなせる業であるとも感じ取れた。面白いのは、おそらくすべて本物の人間の死体であるにもかかわらず、肌は腐りおちておらず、ツルツルとしていた。
「すごいわ……」
思わずそう呟いていた。
そんなユラの姿を先程の男が物陰からじっと見ていた。