第2話

重たい瞼を開くと見慣れない天井だった。
それに凄く広いお部屋。大きな窓からはお日様の光が差し込んでいて眩しい。

「こ、こは?」

えっと私、確か学校の帰り道でおっきなお城に迷いこんでそれで....銀を散らした瞳が私をにらんで.....

「お目覚めですか、姫。」

トントンとノック音の後に聞こえた声と共に扉から入って来たのは、銀を散らした瞳の男のひ、と.....

「.....つ!??」

その人を見た瞬間に昨日の恐怖がまた襲って、私は思わず震える手でシーツを抱き締めていた。
でもその人はどんどん私に近づいてくるし....どうしよ。今度こそ殺されちゃうかも....

男の人との距離がもう数歩で私に届きそうと言うときに、その人が大きく動くのが見えて、私はビクッと身体を震わせ目をつむった。

「.........っ?」

けれど、恐れていた衝撃は来なくて、おそるおそる目を開けるとそこには膝をついて恭しく頭を下げているその男の人がいた。

「申し訳ありませんでした。」

「あの....」

「貴女に剣を向けるなど、あってはならない。
もう俺は絶対に貴女を怖がらせる様なことはしない。
その代わり、俺の全てを懸けて貴女をお守りします。」

「えっと.....」

「ウエラー卿コンラートです。コンラッドと呼んでください。」

「.......コンラッド、さん。 守るって....?」

「 有利陛下の妹君を守のは当然でしょう?
何より俺は、貴女泣かせてしまった。貴女の泣き顔はもう見たくないんです。」

「え?それはどういう......」

意味ですか?そう続ける前にコンラッドさんはスッと、シーツを抱き締めている私の手をとった。それはもう、王子さまみたいな仕草で。そしてそのまま手を口元に近付け.....

「!!!?」

き、きききききキスを、手の甲にキスを落としたのだ!!

「さぁ、もう朝食の準備が出来ていますよ?」

え、え、え、え?いや?え??
朝食よりなにより、コンラッドさんの行動の方が私には大問題なんですけれど....!
なんでそんな恥ずかしいことを。それともなんですか?貴方にとってはこれは単なる挨拶なんですか?そうなんですか?そうなんですよね?
コンラッドさんはまだニコニコ笑ってて、昨日の怖い面影なんて全くないし。
そうだよ。昨日はあんなにギラッギラッに鋭い目をしてたのに、いきなり爽やか笑顔になっちゃて...由子はよくわかりません。いや、昨日は不審者だって思ったんだから訳は分かるけどっ、でもでもっ!

「具合はどうだ?」

なんて、コンラッドを前に悶々としているときだった。金の髪に翠色の瞳の、まるで物語の王子さまのような人が入ってきた。
コンラッドさんの仕草といい、翠の瞳の人といい、ここには王子さまが沢山いるの....?

「なんだ。まだ食べていないのか。折角の朝食がさめてしまうぞ」

「ああ、そうだな。食べられますか?姫」

「あ、はい」

答えるとコンラッドさんがトレイに乗せられていた朝食を並べてくれた。というか、朝食を持ってきてくれていたことに全然気がつかなかった....。コンラッドさんが入って来たときは恐怖でいっぱいで見えてなかったのかもしれない。
コンラッドさんがテーブルに並べてくれている朝食から目を離し、さっき扉から入ってきた翠の瞳の人をチラリと見るとそれに気が付いたのか、

「フォンビーレフェルト卿ヴォルフラムだ」

「え、と。......渋谷由子です」

「ユーリから聞いている。双子の妹なのだろう?」

「....はい」

「さぁ。準備が出来ましたよ」

こくり、と頷くと、コンラッドさんの声がしたのでそちらを向くと、なんともおしゃれな朝ごはんが並んでいた。

「....おいしそう」

いただいます。と挨拶をして、色とりどりに飾られたご飯を食べようとしたときだった。

「ひぃぃぃぃむえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

凄い勢いで扉が開いたかと思うとこれまたとっても美人さんが勢いよく入ってきた。

「ああ、ひめ!お目覚めになったのですね。このギュンター、姫に朝食をお持ちしようと厨房へ行ったところ、もうすでにコンラートが持っていったというではありませんか!それにしても、なんと麗しいお姿!その黒い髪の毛と瞳は、お美しい姫のお顔によく似合ってらっしゃる!こうして姫のお姿を拝見することができとはなんたる光景なことかぁぁぁ"ぁ"ぁ"!」

「え!??」

なんかよく分からないけど、早口で何かを言ったと思ったら、鼻血がすごい勢いで出てるんですけどっ...!?

「ほら、ギュンター。姫が食べられないから」

もう、その後は色々と大変だった。
私が朝ごはん食べるところをコンラッドさんと、ヴォルフラムさんと、なんかよく分かない鼻血さんがずーーと見てきて凄く居心地わるいし。ていうか、


(――有利は、どこにいったの?)




*****


「申し遅れました。わたくし、フォンクライスト卿ギュンターと申します。ギュンターと、お呼びください。」

なんとか、朝ごはんを食べ終わった後、そう挨拶してくれたのは鼻血さんで、他にもグウェンダルて人にもご挨拶をしたのだけれど....。ギュンターに「貴女は姫なのですから、わたくし達に``さん´´などつける必要ないのですよ」と鼻血を堪えながら言われたものだから、さんは止める事にしたのだ。
そしてふぅと一息付いたあと、ギュンターが色々と教えてくれた。

まず、ここは``眞魔国´´だということ。そして、その王が有利だということ。
そう、眞魔国。前に有利が話してくれた国の事だ。冷静に考えていればそう答えも出来ていたのかも知れないけど、ここに来たときの私はお世辞にも冷静とは言えず、ギュンターの話を聞いてようやく有利の話と繋がったのだ。

そしてなんとなんと!
その眞魔国の王である我が双子の兄は私を置いて地球に帰ってしまったらしい!
帰るか帰らないかはシンオウさんって人が決めるらしくて、有利も帰りたくて帰ったのではないってギュンターは言っていたけど....でも!
妹が命の危機に晒されて恐怖で震えてるって言うんだから、ちょっと踏ん張ってくれてもいいのに!
――わたし、こっちで一人でどうしたらいいんだろう。お家にはちゃんと帰れるのかな...?


確かにちょっと私も行ってみたいって思ったりもしたけど、まさか現実になるなんて。


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