第3話
私が眞魔国にきて、丸5日がたった。
わたし専用のお部屋も貰えたし、分からない事があればすぐに教えてくれるし、みんな優しいし、何不自由なく暮らしているわけだけど....、やっぱりここはちょっと馴染めない。
......なーんて思いは正直なく、どちらかといえばこちらの生活にすぐに馴れることが出来ていた。
(自分でも不思議なんだよね。違和感なく生活できちゃうの)
そりゃ、異世界だし魔族とか骨飛族とか驚いたことはたくさんあったけど、なんというか空気とか雰囲気とかそういうのをすんなり受け入れることが出来たのだ。一人を除いて...。
*****
「うわぁ!きれい......!!」
姫が眞魔国に来て5日がたった。
こっちの生活にも大分なれたようで、皆とも仲良くやっているようだ。とくにヴォルフラムとは気が合うみたいで、絵のモデルになったり、二人で話などをしているようだった。元々、人懐っこい性格なのだろう、最初こそ人見知りは酷かったが馴れてしまうと誰とでも仲良くなれるようであった。
あのグウェンダルの執務室にさえ頻繁に訪れているみたいなのだから、相当のものだと思う。
城の人々も姫の事を気に入っているみたいで、何かあれば構っているみたいだ。
けれども、俺のところには滅多に来ないし、どちらかといえば故意に接触を避けているようであった。
まぁ出逢いが出逢いなだけに仕方ないと言えるのだろうが。
パタパタと走り出した姫の後ろ姿を見つつ、大木に寄りかかる。
血盟城から少し離れたところにあるここは、20年前の激戦の最中に俺が見つけた場所だった。
色とりどりの花が一面に咲き誇り、時間がゆっくりと流れる。
少々いりくんだ先にあり、木々が犇めきあっている細い道を抜けないとたどり着けないこの場所は、まだ誰にも教えていない、俺の特別な場所だ。
姫を誘ったときは俺と二人での遠乗りに、余り乗り気でない様だったが、嬉しそうに花に囲まれている姿をみると連れてくる事が出来て本当に良かったと思う。
「....コンラッドさん」
大分長い時間、姫は花達と戯れていたが、再びパタパタと戻ってくるその手には、摘んできた花と花の冠が握られていた。
「さん、はいりませんよ、姫。もちろん敬語も」
「........。」
「街にも行ってみますか?色んな物が売っていますよ」
困った様に俯むく姫に苦笑しつつ街へと誘ってみると、こくりと可愛らしく頷くので、念のためにとコンタクトで目の色をかえて、帽子をかぶせてきたのは正解だった、と笑みがこぼれた。
馬を繋いだ後、城下町を歩くと何時もの如く賑わっていた。至るところから声がかかり、姫のお考えでお土産にと魔王まんじゅうを買い、ゆっくりと歩いている時のだった。
「魔王まんじゅうに、魔王せんべい.....
有利はみんなに好かれているんですね」
良かったと両の手を胸の前で合わせて微笑む姫は、
きっとずっとユーリの事を心配していたんだろう。
「もちろん。なんて言ったって姫のお兄様ですからね」
「.....あの」
下を向いてしまった姫に、どこか具合でもと焦ったときだった。
「今日はとても楽しかったです。お花、とってもきれいでした。それに、街の人たちもとてもいい人ばかり」
姫はふぅ、と一呼吸ついて
「ありがう。コンラッド」
彼女はそれは綺麗な笑みで俺をまっすぐ見て、そう言ったのだ。
あ、でも。コンラッドも姫って呼ぶのやめてね?
とそう続け、恥ずかしそうに笑う#ナマエ#は本当に綺麗だった。
――ああ、ユーリ。
君の妹君は俺がなにがなんでも守ってみせるよ。
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