恋い焦がれ



ある雲一つない晴れきった昼頃───────






豪華なロイヤルな作りをしただだっ広い廊下を、黒のレースをふんだんに使ったドレスに、足元はシンプルに黒一色のハイヒールを履いている少女は、硬い慌ただしいヒールのカツカツカツとした音を鳴らしながら、チラチラと時折背後を気にしながら早歩きをして、何かから逃げていた。








緩く巻かれたプラチナブロンドの髪を揺らし、ロビーへと続く大理石で作られた階段を早々と降りていく。








広い空間にヒールの音が響く。









『ねぇ、カトラーは一階にいるかしら?』









階段の下の両脇に仕えていた兵隊に、少し焦りながら尋ねた。









「ベケット卿なら名前様を探しに一階へ来られ、先程二階へと探しに戻られました」









『あらそうなの。それじゃあ今のうちに外に逃げれる事ができそうね...ありがとう』








「何が外に逃げようだと?」








と話してる途中に、静かな低音の品位のある声が聞こえる。








「逃げようとしても無駄だ。それに、もし逃げたとしても全兵を率いてポートロイヤル中を探し回る」








『そこで権力使うのはずるいわよ…』








「…さて、私と一緒に食事会へ来てもらおうか」









『嫌よ、今日は帰るわ』








「なぜだ?まさか他の男に会いに行くなんて無いだろうな?やっと側に置く事ができたのだ…どれだけ名前の事を愛しているのか君は分かっていない」









『まず、付き合ってないわよ』








突然の告白にベケットは目をパチクリさせた。








「どういう事だ?まだ君と私が付き合ってないだと?名前…冗談もほどほどに」







『そう。とりあえず答えはノーよ』







あまりにも2人が揉めている為、何事かと1人の男が駆けつけた。







「どうなさいましたか?ベケット卿…って名前!!なぜここにいるんだ!?」







『ジェームズ!!!助けて…私、カトラーと無理やり結婚させられそうなの』







「何?ベケット卿、どういう事です?」







あまりにも話が唐突な為、ノリントンは何が何だか分かっていなかった。







「人聞きの悪い…ただ君との婚約発表をしようと」







「何!?待ってください、婚約発表とは何ですか。まず、私と名前はもう結婚しているのですよ」







突然の告白にベケット卿は目を大きく開けたまま固まった。






「……君と名前が結婚していただと…?」






『「そうよ/そうです」』






「そんなのあり得ない。私と名前は付き合っているのだ」






「妄想はやめてください。現に子供だっていますし…」







と名前の腕の中には、パッチリとした目をした名前にそっくりな赤ちゃんがベケットを見つめてニコニコとしていた。







「いや、そんなことあり得ない…嘘だ…子供までいたなんて…絶対にあり得ない…」






あまりにもおかしい話に、ベケットの頭の中はクラクラとし、見ていた世界がグルグルとと回る。







『…トラー、カトラーってば!!!大丈夫!?』






目を開けるとそこは自室のベッドの上だった。






そう、夢を見ていたのだった。






『大丈夫?かなりうなされていたわよ…』






心配している名前にベケットは質問した。






「名前…私と君は恋人かね?」







『何を当たり前の事言ってるのよ。貴方は私の大切な恋人よ』






その答えを聞いて、ベケットは安心したのか名前の唇にキスを重ねる。






『どうしたの?変よカトラー』







ふふっと優しく笑う名前の姿が愛おしく感じたのか、ベケットは名前を抱き締めた。







「変な夢を見た…夢の中の私はどうかしていたのだ…」






『そうなの?心配しないで、私はここに居るわ』






そういうと名前は、ベケットの頬に優しくキスを落とす。






こんな幸せが続けば良いと願うベケットであった。