ある晩、名前はとあるパーティーに向かっていた。
恋人であるカトラーベケットの付き添いとしてだ。
「名前、くれぐれも私から離れない様に。変な男どもに誘われたら大変だ…」
『大丈夫よカトラー』
ベケットは名前に口付ける。
少し暗い馬車の中でも映えるゴールドの刺繍が施されたブラックのドレスがキラキラとひかる。
「今日も美しい…名前…」
照れくさそうに名前はまたベケットにキスをする。
そして2人は馬車から降り、パーティーが行われている屋敷へと足を進めた。
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パーティー会場に入ると、そこはたくさんの招待客が煌びやかな服装で身を包み、豪華な料理に招待客は、シャンパンやワインを嗜んでいた。
絢爛豪華な装飾が部屋全体に施されてる部屋からは、バルコニーへ続く扉もあり、そこからは庭全体が見渡せる。まさに豪邸だ。
「よくぞいらっしゃいましたベケット卿。今日のパーティー、是非楽しんでいってくださいませ。…そちらの美しい女性は?」
パーティーの主催者である男がベケットに挨拶をしに来た。そして隣にいる名前について尋ねた。
「お招きありがとうMr.ジェイク。私の恋人名前だ。」
『こんばんわミスター。お招きいただき大変嬉しいですわ』
名前は少し頭をさげ、微笑み掛ける。
「…ほぉ、大変美しいお連れ様ですね。ベケットが羨ましいです」
名前を褒められ、ベケットは嬉しそうに表情を緩めた。
挨拶が終わったと思えばさすが東インド貿易の重役、カトラーベケットの周りには気に入ってもらおうとたくさんの招待客が集まった。
「ベケット卿。お目にかかれて光栄です」
「最近フランスで…」
あっという間に取り囲まれたベケット。
『離れないでって言ったのはどっちのほうよ...』
名前は仕方なく、適当にワインや食事をいただいた。
周りには人がたくさん。談笑したり、音楽を聴いたり、ダンスをしたり。
名前は人ごみに酔ったのか、少し疲れてしまった。
そして少し経ち、ベケットのところへ戻ろうとすると彼の隣には漆黒の髪を綺麗に巻き上げた女性がいた。
ベケットは名前に気付き、笑みを浮かべた。
『そちらの方は…?』
「こんばんわ。貿易関係でMr.カトラーとお世話になってるイザベラ・リッジウェルよ。Mr.カトラー、こちら方はどういったご関係で?」
イザベラはベケットを下の名前で呼んでいるということから、関わりが深いということがうかがえる。
血の様に赤いドレスを着たイザベラは、気取った様な口調でベケットに尋ねる。
「私の恋人の名前名字だ。」
ベケットに紹介され、名前は唇をすこし緩めただけの笑顔で会釈をした。
「そうでしたの。失礼したわ。…ではMr.カトラーまた後でゆっくりお話し致しましょう」
そう言い、ベケットの頬にキスをした。名前に目線を向けながら。
名前は悟った。この女は間違いなくベケットを狙っている。
「...彼女とはただの仕事関係の関わりだけだ。心配することはない」
ベケットはそう言い、名前の腰を引き、安心させる様に頬にチュッとキスをした。
『そうよね…』
少し不審に思いながらベケットに手を引かれ、別の場所へ移動した。
そこでもベケットは周りに囲まれ、中心となっていた。
『はぁ…』
#name1(#はさすがに疲れたのか、外の冷たい風に当たろうとバルコニーへ向かった。
『気持ちいいわ…』
冷たい風がふわりと吹き、すこし名前の火照った身体を冷たく包む。
外からでもパーティーの賑やかな音楽や、男女の談笑する声がすこし聞こえる。
夜遅いのにまだまだ賑わっているようだ。
バルコニーの手すりにひじをつき、ぼんやりとしていると──────
「今、お一人ですか?」
1人の男性が声を掛けてきた。
『はい。中が暑くて涼んでいたところですわ』
顔を見てみると、綺麗なグレーの瞳をした端正な顔立ちをしている。
服装からして海軍の人らしい。
「私も涼んでいたところです。良かったらご一緒しても?」
ジェントルマンのようにさりげなく肘を曲げ、名前をエスコートする。
(どうしよう…)
チラリとパーティー会場を見てみると、ベケットはさっきの女性と楽しそうに話していた。
(…私のことは放りっぱなしね)
ベケットのその姿を見て名前は彼にエスコートされ、バルコニーを後にした。
「Ms.お名前は?」
『名前名字ですわ。Mr.貴方は?』
「ジョゼフ・レインズだ。」
『Mr.レインズ。よろしくお願いいたしますわ。』
名前は微笑む。
「私の事はジョゼフと呼んでもらっても。名前と呼んでも宜しいですか?」
『構いませんわ。Mr.ジョゼフ、海軍の方なのかしら?』
「お恥ずかしながら。海軍の大佐をやっている」
そう話すジョゼフから受け取った冷たいワインが喉を通る。
パーティー会場に流れている音楽が、ロマンティックなワルツに変わった。すると、談笑していた男女が次々へと中心に集まり、音楽に合わせワルツを踊り始めた。
「良かったら私と一曲どうですか?」
(どうせカトラーはまだ仲良し中よね…)
そう思い伸ばされた手を取り、名前はジョゼフと踊ることにした。
ふわりふわりとステップを踏むごとにドレスが揺れる。ラメが入った黒のミニドレスの裾には、豪華にゴールドでバラの刺繍が施されている。シンプルなデザインだが、よく映えている。足元は輝かしいシルバーのラメで全面覆われているハイヒール。動くたびにドレスと靴がキラキラと輝く。
ジョゼフはもちろん、周りの人々はそんな名前に見惚れた。
「Ms.名前...綺麗だ...」
『ふふっ…ありがとう』
─────すると人混みを掻き分け、近づいてくる人物。
「名前…どういうことだ」
怒りを露わにしたベケットが現れた。
ベケットに気付いたジョゼフは、一気に真っ青になった。
「も、もしかして君は…ベケット卿のお連れ様で…?」
『そうだ。」
名前が答える前にベケットが冷淡な口調で言う。
「大変失礼した…ベケット卿、Ms.名前...」
『謝らなくていいのよ、Ms.ジョゼフ。貴方は全然悪くないわよ。楽しい時間をありがとう。また機会があれば是非ご一緒したいわ』
そう言い、名前はジョゼフの頬にキスをした。
恋人である名前が、見せつけるかのように他の男に口付けをされ、ベケットは静かに怒りに包まれていた。
名前はベケットを追い払うかの様に、ヒールを鳴らしながら部屋の端へと移動する。
「どういうことだ名前…」
『どういう事って私が聞きたいわよ。離れないでって言ったのはどっちなのよ!!!貴方は別の女と平気で話しているのに、何故私はいけないの?』
涙ぐみながらベケットに訴える名前。
するとベケットは名前をグイッと引き寄せ抱きしめた。
「すまなかった名前…私は君が愛しい故、他の男に取られるのがすごく不愉快なんだ…私は名前しか見ていない事ぐらい分かるであろう。あの女なんて眼中にある訳がない」
ベケットは名前にキスの雨を降らす。愛しい物を愛でるように。普段の冷徹なベケットからは想像の出来ないような光景に、周りの招待客は驚いた。
「そろそろ失礼しようか。」
名前を抱きかかえ、パーティー会場を立ち去った。
「あの憎たらしい奴の埋め合わせをじっくりとしようではないか…」
と耳元で囁いて──────