君だけを

──────あるよく晴れたポートロイヤル。











ブラックを基調とした美しい金の刺繍が施されているふんわりとしたドレスを身に纏った一人の女性が、優雅に船着場へと向かっていた。













髪は上品に巻かれており、ダイヤモンドのネックレスやピアスなどが輝いている。













容姿端麗でしかも高貴な身分の女性だと一目見て分かる。











その姿はまるでどこかの物語に出てきそうな程の美しさだ。











その美しさのあまり、通りすがる街の人々や、船着場の人々全てが彼女に見惚れていた。












その中に東インド貿易会社の下っ端である二人がコソコソと話していた。













「なぁ、あの美人な方は誰だ?この辺じゃ見たことない顔だ…」












「お前、あの方を知らないのか!?べケット卿の恋人、名前名字様だ。前なんて、ノリントン提督と取り合いをしていたらしい。要するにゾッコンってやつさ」












「ベケット卿も彼女の前だったらまるで甘々な彼氏なんて想像するだけで「呼んだかね?」













声がする方に部下の二人がハッと振り返るとそこにはどこから現れたのか、あからさまに不機嫌なベケット卿が立っていた。













「…貴様達は仕事より口の方がよく働くな。」















「「しっ、失礼いたしました!!!!」」













(フンッ、馬鹿な奴らだ…)















睨みを利かせ、一喝させられた部下達は敬礼し、急いでその場を離れた彼らを横目で睨み、名前のいる所へと足を進めた。












(やはり私の名前は遠くから見ても美しさが際立っているな…私が選んで買ってやったネックレスにイヤリングにドレスまで全てが名前の美しさをより引き出している)












「名前に仕立て屋を呼べ。最高級の品を沢山用意させよ。」











「はっ。」












(愛しい彼女の為に何でも与えてやろう。)










ベケット卿はそう思い、仕えていた部下に命令した。













『あら、カトラー。良い天気だったから貴方に会いに来たのよ。』












名前に会った瞬間、ベケットの顔は頬が一気に緩んだ。













「ごきげんよう、名前。それは嬉しいことだ。私の選んだ物が君の美しさをより一層引き立てているよ。美しい。」












顔をほころばせ、甘い声で名前に話す。












『嬉しいわ。こんな素敵な物を頂いて。今日の貴方もステキよ。』













「…それは嬉しい。今日仕立て屋を呼んだから好きに頼むと良い」












『あら本当?楽しみだわ』










「君の望みなら何でも叶えてやろう。」












名前はふふっと艶やかな笑みをこぼしながらベケットの胸に手を当てた。












ベケットは彼女の腰に手を回し、熱っぽい視線で名前を見つめた。












「私は君だけだ。君しか興味がない。君しか考えられない。君に変な虫が付かないかいつも心配だ…愛しくて、愛しくて…愛しているよ私の名前…」












『相変わらず独占欲が強いのね、私も愛してるわ』













耐えきれなくなったベケットは名前を抱擁し、そのまま唇を重ねた。











大勢の部下の前でも御構い無しだ。
まるで私の所有物だと見せつけるかのようにして。












2人はキラキラとした空を後にして、屋敷へと戻って行った。











(愛しくて愛しくて、)








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「ほらな、言っただろ。彼女に甘々なんだよ」











「あんなベケット卿見たことない...」









怒られた部下為は普段では考えられないベケットを柱の影から見ていたのであった。