幽霊を見つけてしまった

 前世、とある話を読んだ。人が生まれてくる前の話だ。
 そこには白の門と黒の門というものがあって、神様と黒白それぞれの使者がいる。生まれる前の魂にはその時だけの自我があって、神様に頼むと生まれた後の人生をすこしだけ見せてくれる。でも、生まれてからのことは誰にも分からない。『未来は変えられる・・・・・』、それが話の根幹だった。

 じゃあ。じゃあ、わたしはどうして生まれてきたのだろうか。今世ここに生まれてきて、前世の記憶が蘇って、それからずっと、ふとした折にそんな詮無いことを考えている。
 生まれる前の『わたし』はこの人生をみて、なのにどうして生まれてこようとしたのだろうか。見たのなら、それが特に人生の中でも生まれたくなくなるような惨事の場面なら、きっとあのこと・・・・も知っていたのだろう。なんど拙い手で辿っても、悪夢を見ても、記憶の有無でどうにかなるような生易しいものではなかった。つまりはあれ・・はどうやっても変えようがなかったのだ。じゃあ、なんで?と。意味のないことだ。知っている。わかっている。でも、
 ただ、それだけを芯に生きている。

 ──だって私は、どうしようもないほどに、文字通り、死んでも優柔不断だったのだから──今更、どうしようもないのだ。