Epilogue
ヤ「え、急にどうしたの?もう壊れちゃった?流石にまだ早いと思うけど」
カ「こんなのは俺じゃない!俺の望む俺じゃない!」
ヒ「気でも狂ったか」
そう、記憶して文字に打とうと思った時。イヤホンから「もう嫌だ!戻る!もう戻りたい!!」声が聞こえてきた。
その声を脳で認識する頃には、俺は気を失った。
そうして俺は戻った。
ここからが問題だ。目の前にいるやつらは俺を壊そうとしている。完全に豚……岡谷芳樹の所為なのだが、戻った以上なんとかしなくてはならない。
「あ、起きたんだ!何をしても起きなかったんだよ?死んだのかと思った」
「では再開しよう」
「そうだね。何やってたんだっけ」
「ゲームだろ?」
「そうだったそうだった」
こんな状況でも楽しそうにしてるとか異常だろ。知ってて受け入れてたけど、敵に回すと本当に面倒だな。
健太郎は寝ている。ザキは宣言通り見てるだけ、か。
しばらくこのままでも今後の生活に問題ないが、水を被りっぱなしのこの身体じゃもう風邪引いてもおかしくない。後はずっと同じ体勢で縛られていた所為か身体の節々が痛いし、この状況を受け入れるほどマゾじゃない。
さっさと拘束を解いて貰おう。大切なのはタイミングだ。
「じゃあまた目隠しするー?それとも今度は外してやるー?選ばせてあげるよ!」
「何も喋れなくなったか」
「えー、そんな事ないでしょ。人間そんな簡単に声なんて失わないって。だから早くどっちか選んでよ。それとも水責めの方がいい?」
「黙れ」
「え」
「そして拘束を解け」
「何言って」
「俺の言うことが聞けないのか?」
「もう」
「もう従う理由がないって?俺はお前らとの約束を破ったつもりはねーよ」
「は、花宮なのか……?」
「俺以外に見えるのか?だとしたら眼科に行った方がいい。てか早く解けよ。同じ体勢で何時間いると思ってんの?」
「わかった」
「古橋いいの?」
「あぁ」
よし、これでもう終わったも同然。康次郎が察しのいい奴でよかった。一哉はまだダメか。ザキはわけがわからないって顔をしている。健太郎は寝てるから論外。
「康次郎、お前のスマホ貸せ」
「わかった」
借りたスマホで、俺が立ててたスレを探す。そしてそのスレのURLをコピーして全員に送った。
「はい、返す。とりあえずそのスレを読め。他の奴らも今送ったら」
「お、おう」
「ザキまで……もう仕方ないなー。わかったよ」
健太郎は……まだ寝てんのか。なんでこの状況で寝ていられるだよ。いや、そうだな、試合中も寝てるくらいだからこれくらいじゃ起きないか。
「健太郎、さっさと起きろ」
「……ふぁああ…………え、なに、花宮?」
「黙って今康次郎のスマホから送ったヤツを読め。質問は読み終わってから受け付ける。他の奴らもな」
「……わかったよ」
はい、終わり。後はこいつらが読み終わるのを待つだけだ。
この後が大変だろうな……
あー、面倒くさい。そこそこ楽しかったけど、事後処理大変すぎるだろ。
こいつら以外のやつは……そうだな、これから一週間ほど休んで、疲れてたって事にしよう。もともと俺の仕事量は異常だったし教師共に謝れば問題ないだろ。
後は一哉に押し付けられた犯人役を2組の嶋田あたりに変えよう。あいつなんかウザいし。
しばらくは疑惑の目で見られるだろうけど、気にしなければいい話だ。
部活はこの4人が従えば他の奴らも従う。見れなかった分復帰したら10日ほどは厳しいメニューでいこうか。
そろそろ健太郎は読み終わる頃か?俺が発言してたところはそんなにないし、この中で一番読むのが早い。
「そのスレを最後まで読み終わってのなら質問をどーぞ」
「じゃあ、俺から。今までのが盛大な演技って訳じゃないよね」
「当たり前だ。誰が好んで自分の地位を落とすかよ」
「俺も読み終わったから質問していいか?」
「許す」
「入れ替わった先は誰だ?」
「岡谷芳樹。同学年。去年の冬から不登校。昨日から保健室登校。さっきまでは図書室いたけど、今頃逃げ帰ってるんじゃないか?また引きこもるだろうな」
「そうか」
「後で全員で報復するからまだ待機しとけよ」
「わかった」
一哉とザキはまだかかるか。
「他に質問は?」
「どうやって入れ替わったかわかる?」
「いや、岡谷芳樹の部屋にはそれらしき方法が書かれてるものはなかった。スマホは壊したし、PCも売ったからわからないな。本人に聞けば?」
「そうなんだ。ありがと」
「スレからすると、花宮は俺達の側にいた時があった。それなのに俺は気づけなかった。近くにいたのに、俺が、花宮を……」
「外見違うから仕方ねーだろ。むしろ気づく方が気持ち悪い。あーもう、こんな事で泣くなよ」
「花宮の言うことを聞きたいのだが、何故か涙が止まらないんだ」
「は、花みゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ」
「うるさい」
「ごめんね!俺、花宮を!!苦しくなかった!?辛くなかった!?」
「少し黙れ。それを経験したのは俺の身体でも、俺じゃない。気にするな」
「うぅ……は、花宮を傷つけちゃったぁ…………」
「お前もかよ!何で泣くんだ……」
「だっでぇ……だっでぇ!」
「もうわかったから」
「花宮!」
「なんだ、ザキ?」
「すまなかった」
「あーはいはい」
「それと、スレ内で俺の質問に答えてくれてありがとう」
「どーいたしまして。俺はお前が流されなかった事に驚いたよ。また人間に一歩近づけたな」
「お、俺は、さ、花宮が戻って来てくれて、ほんとうに、ほんとうによ、よかったよ」
「なんでお前まで泣くんだよ。もう泣いてないの健太郎だけじゃねーか」
「花宮」
「あ?」
「ごめん、俺もなんか涙出てきた」
「まじか」
なんなのこいつら。まじでなんなの。なんでそんなの泣くの。つーかどうしよう、泣き止ませるの俺が俺だと分からせる以上に難しいんだけど。
「あー、もう!ほら全員こっちに来い」
「「「「花宮!」」」」
声を揃えて呼ぶなよ。
「全員俺の状況をみようか」
「花宮の」
「状況……?」
「ずぶ濡れだね」
「あ!そうじゃん」
「俺とした事が、すまない。すっかり忘れていた。このままでは花宮が風邪を引いてしまう」
「全員泣いている暇あるのか?あーあ、寒い寒い。なんで俺はずぶ濡れなんだろうか。手首も縛られてたからヒリヒリするし」
全員呼んで、抱きしめてやるとでも思ったか?残念、そんな事しねーよ。
てかまじで寒い。
「た、タオル!!」
「俺換えの着替えもってくるよ」
「花宮、とりあえずブレザー脱いでくれ」
「俺救急箱取ってくる」
それから、俺を温めたり手当したりと全員が忙しなく動いてるうちに自然と涙は止まり、ようやくひと段落ついた。
「花みゃー、抱きついていい?」
「名前を略すな。いつもは許可取るまでもなく抱きついてきてるだろ」
「では俺も抱きつこう」
「どーぞ」
前から康次郎、後ろから一哉に抱きつかれて、完全挟まれた。
「じゃあ俺も」
「健太郎は珍しいな」
「そうだねー」
ザキが仲間になりたそうにこちらを見ている、って感じだな。
「さっさとお前も来いよ」
「おう!」
健太郎は右から、ザキは左から抱きついてきて、さらに増えた。
おしくらまんじゅうみたいだな。さっきまで寒かったからか人の体温が心地よい。ぬくぬくする。
ただし全員俺が背が高いのがマイナスポイントだ。男子高校生が何やってるんだろうな。
このまましばらくずっとみんなでひっつきあってた。
ピンポンパンポーン
《完全下校時刻まで、後15分です。校内に残ってる生徒は速やかに帰宅してください》
ピンポンパンポーン
部活があればまだ俺達が残ってても問題ないのだが、今日は放送でバスケ部は休みと言ってしまっている。完全下校時刻を過ぎたら教師共が見回りをしだすから、さっさと帰らないとやっかいなことになるな。
「お前らもう離れろ。帰るぞ」
「えー」
「文句言うなよ。花宮の迷惑になる」
「そうだね」
「はーい。わかったよ」
そして完全下校時刻をむかえる前に全員で帰った。
その下校中。
「花宮、今日はもう帰るのか?」
「そのつもりだけど?」
知らない人間が家に入っていたんだ。さっさと帰ってどうなっているのか把握したい。
「そうか」
「えー!帰っちゃうの!?もう少し一緒にいよーよ。ファミレスとか行こう」
「あー、俺もファミレス行きてえな」
「じゃあ俺も」
「花宮が行くなら行く」
いつもならこいつらの事なんか放っておいてさっさと帰る選択肢をとるのだが、今回迷惑をかけたのは事実だ。俺の所為じゃないけどな。
それにここで帰ったらまた泣きそう。それは面倒だ。
「はぁ、仕方ねーな」
「やったー!ありがと!!」
「はいはい」
「じゃあ行くか」
「そうだね」
「何食べようかなー」
「別に今決めなくてもいいんじゃないか?」
「考えながら行った方がより楽しめるじゃん」
「そんな事ないと思うけど」
くだらない会話をしながらファミレスに行く。学校から400mほど離れた所にあるファミレスだ。
「着いたー」
「ザキ、名前書いて来い」
「わかった」
「平日だし、すぐに入れそうだね」
「そうだな」
「なー、2人と3人ならすぐ入れるってよ」
「5人で」
「じゃあ伝えてくる」
「いってらー」
店内を見る限りそこそこ席は空いているが、5人で入れる場所はちょうど空いてなかったみたいだ。この待ち時間にスレで戻ったことを報告しよう。
もう書き込める数が少なかったはずだ。わざわざ報告しなければならないという決まりは無いが、中途半端になるのは嫌だ。
ちなみに俺のスマホは俺の鞄に入っていた。ロックはかけてあったから岡谷芳樹に中を見られたということはないだろう。
ロックナンバーは俺と全く関係ない素数だし。
ただし、使えなかったからかきちんと充電はされておらず、残り20%を切っている。
「なになにー?あのスレ?」
「あぁ。どうせならちゃんと終わらせたいだろ」
「へー」
そんな会話をしながら、今までの経緯を書き込んだ。
「じゃあ俺も投稿しよ!」
「は?」
「いいじゃん最後だし」
「まぁいいけど」
「なら最後の5個は全員で埋めよう」
「あ、それいいね!」
「1000は花宮が書けよ」
「はいはい」
タイミングを見計らって996からそれぞれ書いたものを投稿する。
1000 カラス
今まで付き合ってくれてどーも
いい暇つぶしになったよ
>>1000なのでお前達は俺を裏切らない
そうしてスレは終わった。