鍵を見つけた残り8回目
中学1年生の最初に戻ってきた。今回はアメリカで赤司に勝てそうな黒子の相棒を探さないといけない。
1年以内に留学する事を母親に説得出来ればいいんだが……とりあえず自分は優秀だという事を認識させよう。それに海外留学をしている息子がいるというのは良いステータスだと思わせよう。
たとえそれで留学できたとしても時間がない。アメリカでバスケをしている日本人のコミュニティを作るというのはどうだろうか。普段から強い同年代の日本人を探していることを伝えておけば情報が入るかもしれない。
プラスして良い人材を見つけた場合、どうやって日本連れてきて誠凛に入学させるのかも考えなければ……
時間はないのにやる事が多すぎる。
今回で良い人材を見つけられるといいんだけどな。
候補者が数人見つかった。
元WNBAにいたアレクサンドリア・ガルシアを師匠とし、治安の悪いところで賭けバスケをやっていた火神大我と氷室辰也に、元帝光中バスケキャプテンの虹村修造の3人だ。
他にもいくらか候補は上がったのだが、実際にプレーを見たところ、この3人以外はキセキの世代の相手にならないレベルだった。
黒子の相棒になりやすそうで、赤司を倒してあっさりとキセキの仲を戻せそうなのは虹村なのだが、彼はアメリカに行った理由が父親の病気の治療の為、というものだったので、彼を日本に戻すとなると、父親の病気をなんとかしなければならないだろう。けれど、流石にそんなことを出来る術を持っていない。
残りは火神と氷室になるが……どっちが黒子の相棒となり赤司を倒せるのに向いているだろうか。
こればっかりは直接黒子と合わせてみないとわからない。
今回は使えるモノを全て使って氷室を日本に送り込もう。どうせ今回じゃ無理だから、俺の存在がバレてもいい。
探すのに時間がかかったから、黒子と一緒に試合を出させるのはギリギリだろうか。
黒子が高一の夏になりそうだ。
ダメだった。
彼では無理だ。
確かに極限まで基本的な動きを洗練させ、青峰さえもフェイントに引っかけさせる事が出来たが、彼はゾーンに入れない。
ゾーンに入れないのならいくらキセキの世代と同くらいのレベルでも、ゾーンに入れる青峰には勝てないし、青峰に勝てないのなら赤司にも絶対に勝てないだろう。
彼はあんなにもバスケが好きで、真摯に向き合っていて、あのレベルのプレーが出来るのに、ゾーンに入れないとは思わなかった。
よく観察したところ、僅かな誰かに対する劣等感が邪魔しているようだった。
彼はずっと火神と一緒にいたのだから、劣等感を抱くとしたら火神か、師匠のアレックスにだろうか。
あれだけ上手いプレーをする人物の劣等感を抱く相手が火神なのだとしたら、火神の方は少し期待出来るかもしれない。
次は火神が日本に来るように調整しよう。
今回は氷室の観察に力を入れていたから、気づいたら先輩が死んでいた。
そして気づいたらいつも通りカラスが目の前にいた。
「早く戻してくれ」
「せっかちだなぁ。今回はヒントとか聞かないの?」
「次のやる事は決まってるから」
「そう。ならさっさと戻そう。またね」
次は、次こそは……