信じてもらった4回目


先輩との関わりを絶っても、先輩が死ぬ未来は変わらない。

なら、今度は仲良くなってみよう。

馬鹿みたいに先輩に懐いて、高校も同じにして、いつでも一緒にいた。

先輩は仕方ないなぁ、なんていう目で見ながらも俺に付き合ってくれた。

恋人同士というわけではない。

依存するように先輩にくっついて回る俺を先輩が受け入れただけの話だ。





未来を変える方法がわからなかった俺は正直に話した。


「明日、先輩が死ぬんです」

「急に何言うとんねん」

「信じてください。明日、事故で先輩は死にます」

「んー、花宮は冗談でこないな事言わんし……明日の外出は控える事にするわ」

「信じてくれるんですか?」

「なんや、嘘なん?」

「違いますよ。信じてくれてありがとうございます」

「1日くらいかまへんかまへん。ワシも死にたいわけやないし」





そう言った先輩は、宣言通りその日は自分の家にいた。

けれど、先輩の家に大型トラックが突っ込んで、先輩はそれに巻き込まれて死んだ。

俺に言われなかったら外出していたであろう先輩は俺の言葉を信じて家にいたのに、巻き込まれた。

これじゃあ俺が殺したようなもんだ。

違う、俺が殺した。





遺族に顔向けできなかったけど、葬式には出た。

何回でても葬式には慣れない。

そんな帰り、やっぱりカラスにあった。


「また死んじゃったね」


俺はずっと気になっていた事を聞く事にした。


「ひとつ、聞きたいことがあるんだ」

「運命を変える方法は教えないよ」

「違う、そうじゃない」


先輩が死なない方法を聞いても教えてくれないのはもう分かってる。

だから、もうそれはいいんだ。

そんなんじゃなくて、もっと根本的な疑問。


「どうして俺を過去に戻すんだ?」

「キミがそう選択したんじゃないか」

「過去に戻りたい人間なんていっぱいいる。何故、俺を選んだ?」

「たまたま、偶然、キミに会ったからだよ。それこそ運命というやつさ」

「そう、なんだ」


その答えに納得した訳じゃない。

でもそう言われてしまえば、俺には反論できなかった。


「そんなことより、時間だよ。過去に、戻る?」

「戻る」


先輩が助かるまで、俺に戻らないという選択はない。