手を染めた5回目


相変わらず、先輩を助ける方法がわからなかった。

前と変わったことといえば、俺の成績が上がってくらいで、他は恐ろしいほどに何も変わらない。

中学生をやるのが5回目になる俺にとっては、成績が上がるのは当たり前だった。

なんなら、テストの内容でさえ見覚えのあるものばっかで、こんなに繰り返しているのなら答えを間違う方がおかしい。

でも、俺は成績を上げるために戻ってる訳じゃない。先輩を助けたいだけなんだ。





今回はそこそこの仲を保ったまま過ごして、先輩が中学を卒業して自然と関係は切れた。

同じ高校は選ばない。俺は最初と同じ霧崎第一に進学した。

1回目で難しいと感じていたテストは、今回じゃ簡単に思えた。





そして2月25日、の前日。俺は先輩を誘拐した。

事故に遭って死ぬのなら、俺が閉じ込めて守ろうと思った。

顔は隠してたけど、察しのいい先輩には誘拐犯が俺だと気づかれてしまった。


「なんで……なんで……こないな事するんや、花宮!!」

「先輩のためですよ」

「意味がわからへん」

「26日になったら解放するので、それまで大人しくしててください」


25日が過ぎるまで、ずっと先輩から目を離さないつもりだった。

けど、繰り返して成績が上がった俺と、もともと頭の良い先輩じゃ、先輩の方が何枚も上手で、逃げられた。

夕食の準備をするために後ろを向いたほんのちょっとの隙を突かれた。

先輩が逃げないようにドアに鍵をかけて隠していたけど、鍵の場所なんて先輩からしたらバレバレだったみたいだ。本当に鋭い観察眼を持っている。

逃げた先輩を追ったものの、先輩は逃げた先で車に轢かれた。

先輩は死んだ。

また、ダメだった。





先輩を誘拐した俺は、今回の葬式は出なかった。当たり前だ。俺は犯罪者なのだから、出れる訳がない。

けれど葬式の日に変わらずカラスは現れる。


「まだ続ける?」

「当たり前だ」


今回は会話などしなかった。