何もしなかった6回目
わからない。どうすれば先輩は助かる?俺は何をすればいい?何を変えればいい?
考えても考えても答えは出なかった。
そして何もできないまま先輩は死んだ。
「完全な無駄死にだったね!」
「俺は……」
「ん?なに?」
「俺は後何回やり直せる?」
今更だけど、何回でもやり直せるはずがない。なんの対価もなく過去に戻れるはずがない。
こいつは一番最初に言った。取引成立だと。
けど、俺はこいつに何も渡していない。取引と言いながら、これでは一方的な関係だ。
取引になっていない。
6回目にして俺はようやくその事に気づいた。
今回先輩の死を回避する為に、何もしないでいた結果だ。
「俺は何を対価に過去に戻ってる?」
「あぁ、その事か。キミが戻れる回数は数十回くらい?」
「曖昧だな」
「で、キミが過去に戻る対価は、キミの寿命だ」
「寿命……??」
「うん。一回戻る事に一年、貰ってるよ。あぁ、怒らないでね。過去を変えられるのなら一年なんて安いもんでしょ。勝手に貰ってたけど、そっちが聞かなかったのが悪いんだ」
「……わかってる。先輩を助けられるなら、俺の寿命などくれてやるよ」
「へぇー、そう。じゃあ今回も?」
「うん、戻るよ」
「わかった」
そして俺はまた戻る。