04

次の日。

部活がちょうど無い日だったということもあり、彼らは市の図書館に来ていた。目的は怪盗キッドの過去の新聞記事を集める為だ。


「これで全部かな」

「やっぱり怪盗キッドって1度犯行が止まってんのな」

「考えられる犯行が止まった理由は3つ。別件で逮捕されていた。病気か事故で入院していた。8年前に死んでいて、今の怪盗キッドは別人、のどれかだ」

「へー」


ちなみに、今彼らがいるのは会議室だ。司書の方にちょっとみんなで調べてることがあって、と話せば快く貸してくれた。

私服なら第一印象が"ガラが悪い"になっていたところを、ここまで快く貸してくれたのは、霧崎第一の制服を来ていたが大きい。

霧崎第一の名前はここでも響いてくる。


「俺は今の怪盗キッドは昔と別人説をおすよ」

「えー、瀬戸なんで?」

「見ればわかる」

「いや見てもわかん「骨格が違う」……遮るな!!つかやっぱ骨格が違うとか言われてもわかんねーよ!!」

「瀬戸が言うならそうなんだろ。模倣犯だったら警察が気づくだろうから……身内か?」


瞳の位置や骨格を検知して顔を識別するAIソフトならともかく、パッと見で骨格で同一人物か判断できる人はそうそういない。

だからこれは山崎の反応が正しいのだが、花宮はそれを当然のように受け入れていた。


「怪盗キッドが育てていた弟子とかがいたなら、怪盗キッドが犯行を行えなくなってからすぐに代替わりするだろうから、間が空いてたってことは息子とかかなぁ」

「いや、弟子は幼かったのかもしれない」

「衣装とかが引き継がれてるってことは、一緒に住んでそうだよな」


こうして話し合いは進んでいく。

しかし、怪盗キッドの手がかりを掴めることなく、この日は日本で行われた怪盗キッドの犯行をまとめて終わった。





そのまた次の日。

今日は瀬戸の家に集まっていた。

原家同様、無駄に大きい家で、瀬戸の部屋には難しそうな英字の本が並べられている。その中には高校生が到底読めるものではない医学書も混ざっていた。


「また本の量増えた?」

「花宮ほどじゃないけどね。はい、これ。頼まれてた海外の新聞」


瀬戸が差し出したのは、怪盗キッドの犯行がまとめられている海外の新聞だった。数十カ国もの種類がある。


「これ全部のキッドの犯行?」

「そう言われたからね」

「へぇ、結構あるんだな」

「じゃあ犯行場所と日付、時間をまとめるか」


そうして彼らはキッドが誰かという推理は置いといて、犯行のまとめをし始めた。

30分もすれば、そのまとめは出来上がる。


「結構バラバラ〜」

「いやでもさ、最近のは犯行が土日に固まってないか?平日にあるのって大体が8月とかだよな」

「えっ、まさか怪盗キッドって学生?」

「そうみたいだな。高校生だ」

「大学生かもよ?」

「ねーよ。大学生なら平日の昼間の犯行がもっとあってもおかしくない」


流石霧崎第一高校の生徒といったところか、どんどん犯人の範囲を絞っていく。


「あ、そっか!じゃあ俺らとタメの可能性あるのかぁ」

「日本の高校生約300万人のうちの誰かってことか」

「範囲広すぎぃ」


ちなみに日本人と断定しているのは、怪盗キッドの犯行映像から言葉の発音を聞いて原が断定した。他にも犯行の中心が日本になっていることもあげられている。

怪盗キッドは日本の高校生。

そう断定しただけでも警察より捜査は進んでいるが、それでもまだ特定には至っていない。

この日も結局推理は進まないまま、解散となった。

その次の日も、そのまた次の日も、彼らは誰かの家に集まって、怪盗キッドが誰かを考える。

1度、世界的マジシャンである黒羽盗一の死亡時期と、怪盗キッドが犯行を休止した時期が同じである。というところまで迫ったのだが、"世界的マジシャンが宝石を盗む動機がない"ということで犯人から除外されてしまった。

彼らは所詮、頭が良いだけの高校生。なんの捜査権限も能力もない。世間一般に公表されている情報だけで正体を探るのは無理だったのだろうか。


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