一次試験
鬼灯様はあれから期限ギリギリにハンター試験の申し込みをして、開催される前はいろんなところで用心棒として働いていた。
ちなみに鬼灯様はすでにハンター文字が読める。
亡者に教えて貰ってから3日で完全に読めるようになっていたのだ。ハンター文字はひらがな50音とあまり変わらない。鬼灯様の記憶力なら余裕で覚えられた。
さて、いよいよ試験当日。鬼灯様はやはりそこらへんにいる浮遊霊から情報を集めて、あっさりと試験会場にたどり着いた。
「ステーキ定食を弱火でじっくりお願いします」
「あいよ」
そんな合言葉も言い、鬼灯様は奥へ
「あ、お腹が空いているので3人前ください」
「あいよ」
奥へ通された。
ちゃんと、そこには3人分のステーキがある。ちゃんとお客さんの注文を聞くいい店主だ。
そして鬼灯様がそのステーキを食べ終わる頃に、エレベーターはちょうど地下100階に着いた。
渡された番号は59番。
(1万人に1人がたどり着くって聞いたのですけれど、案外人数が多いですね)
鬼灯様はそんな事を思っていた。
それから、どんどん会場に来る人数は増えていった。
人が増え、新人が来たと確認出来たら、トンパは優しく話しかけて下剤入りジュースを渡している。もちろん、鬼灯様も新人という部類に入る。けれどツノがある、見慣れない鬼という異形な姿をした鬼灯様に話しかける勇気はトンパにはなかった。そんな勇気があったのなら新人潰しなどしていない。
そして
ジリリリリリリリリリリ
「ただ今をもって、受付け時間を終了いたします。では、これよりハンター試験を開始いたします。こちらへどうぞ」
いよいよハンター試験が始まる。
「さて、一応確認いたしますが、ハンター試験は大変厳しいものでもあり、運が悪かったり、実力が乏しかったりすると、怪我したり、死んだりします。先程のように受験生同士の争いで再起不能になる場合も多々ございます。それでも構わない、という方のみついて来て下さい」
ここまで来てやめる人はいるわけがないが、規則なのだろうか、サトツは丁寧に説明をした。
「承知しました。一次試験405名全員参加ですね。申し遅れましたが私、一次試験担当官のサトツと申します。これより、皆様を二次試験会場へ案内いたします」
そう言い終わる頃には、全体的にかなりのスピードで走っていた。
「二次試験会場まで私について来ること、これが一次試験でございます」
鬼灯様は常人からするとかなり重い金棒を持って走る事になる。が、鬼灯様は鬼なのだから何の問題もない。草履も普通に考えればかなり走りにくいはずなのだが、鬼灯様は慣れているので何の問題もない。
(別に走るのはいいのですが、少々暇ですね)
このくらいの試験、鬼灯様は余裕のようだ。
だからといって前の人を抜かしてどんどん前へ行くという事はなく、機械のようにずっと同じペースで走り真ん中の位置をキープしていた。ただし階段ゾーンに入ったらペースが落ちる人が増え、脱落者も増えたため、自然と前の方に来ていた。
そしてようやく地下から抜けた。
ここから先はヌメーレ湿原を走る。
「この湿原の生き物はありとあらゆる方法で獲物をあざむき補食しようとします。標的をだまして食い物にする生物たちの生態系……詐欺師の塒とよばれるゆえんです。だまされることのないよう注意深く、しっかりと私のあとをついて来て下さい」
わざわざ止まり、そう説明するのはだいぶ優しい。
そんな時
「ウソだ!!そいつはウソをついている!! そいつはニセ者だ!!試験官じゃない。俺が本当の試験官だ!!」
そう叫び出したオトコが現れた。
「ニセ者!?どういうことだ!?」
「じゃ、じゃあこいつは一体……!?」
「ヌメーレ湿原に生息する人面猿。人面猿は新鮮な人肉を好む。しかし手足が細長く非常に力が弱い。そこで自ら人に扮し、言葉巧みに人間を湿原につれこみ、他の生き物と連携して獲物を生け捕りにするんだ!!そいつはハンター試験に集まった受験生を一網打尽にする気だぞ!!」
その説明で、サトツに疑惑の目が向けられる。わざわざさっき湿原について説明されたのに、もう騙されるなんて、ここは脳筋の集まりなのだろうか。
(動物ごときにやられる者が試験官な筈がない)
もちろん鬼灯様はこんなことでは騙されない。むしろ数千年生きてる鬼灯様を騙す人がいるなら見てみたいものだ。
その後ヒソカがその男とサトツにトランプをなげ、男は殺された。ついでに猿も殺された。その後もう一度説明があり、ようやくヌメーレ湿原へ入った。
そして二次試験会場へと着いた。
あまりにもあっさりしているが、試験を受けているのは鬼灯様だ。走って着いていくだけの試験、落ちる方がおかしい。
ヒソカの試験官ごっこにも巻き込まれていない。なぜなら、普通に走っているだけで上位にいたからだ。
こうして鬼灯様は一次試験を突破した。
というか徹夜で天国から地獄まで落ちる穴を掘るような人が、こんなところでくたばるわけがない。