二次試験
一次が終われば、次は2つ目の試験。といっても、受験生達は謎の音が中から聞こえてくる建物の外で待たされていた。
そして12時になり、ようやく扉が開いた。
「どお?おなかは大分すいてきた?」
「聞いてのとおり、もーペコペコだよ」
謎の音はブバラの腹の音。二次試験の内容は美食ハンターの2人をそれぞれ満足させることだ。
まずは、散々腹を鳴らしていたブバラの番。課題は豚の丸焼きならなんでもいいらしい。しかし、この周辺にはグレイトスタンプという豚しかいない。
グレイトスタンプは世界で最も凶暴な豚だ。大きくて頑丈な鼻を持っている。でもそんな動物の鼻より、鬼灯様が持っている金棒の方が頑丈だった。
鬼灯様は突進してくるグレイトスタンプに真っ向から立ち向かい、金棒をフルスイングした。頑丈で有名な鼻はあっさりと折れ、そのまま弱点である額にあたり、ぶっ飛ばした。
それをそのまま焼き、合格。
他の受験生とは違いは鼻が折れているくらいなので落ちる理由がなかった。
そして次はメンチの番となる。
「二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!」
この世界ではスシは少数民族の料理となっており、存在すら知らないものも多い。
けれど鬼灯様にとっては、10年ほどガチで修行していたもので、修行した後も重要な席や主要人物に対するおもてなしとして作り続けていた。控えめにいってこの試験は余裕すぎた。1次試験より簡単だ。
もちろん、この周りには海などない。あるのは川で、いる魚は自然と淡水魚のみとなる。しかも、鬼灯様にとっては見たこともないよくわからない魚だ。そう考えれば少しは難しくなるのかもしれないが、普段鬼灯様は植物か魚かさえわかってない金魚草でスシを握っている。やっぱり簡単だ。むしろ鬼灯様のためにあるような試験内容だ。
受験生達が困惑する中、鬼灯様はさっさと素手で魚を捕まえていた。そしてレオリオが材料に魚を使うと大声でバラす頃には、魚を捌いていた。さらに、受験生達が魚を捕まえて戻ってくる頃には、もうスシを握り終えていた。
「お願いします」
「あら、随分と早いのね。へー、この様子だとスシを知っていたみたいね」
「えぇ、まぁ」
「んじゃ、いただきます」
そうしてメンチは鬼灯様のスシを食べた。
「……な、な、な、なにこれ!?美味しい!!今まで食べた中で一番かも!?この場所にまともな魚なんて居なかったはずなのに!?あんた何者!?!?スシ職人!?!?少なくとも数年くらいの修行じゃ出せない味だわ!!一体なにをしたらこんなに美味しくなるの!?」
あまりにもな美味しさにメンチは大興奮である。
鬼灯様が直々に握ったスシが美味しくない訳がなかった。
「私はスシ職人でもないですし、特にスシに何かをしたわけでもありません。それより、合否の程を伺ってもよろしいでしょうか?」
「もちろん合格よ!!これを落とす人なんていないわ!!そんな事より、スシを握る……いえ、魚を捌くところから見せてくれない!?」
「メンチさんは試験官ですよね?そんな事している暇はないのでは?」
「そ、そうだけど……!!」
「自分の責務を放棄するのは良くないですよ」
「じゃ、じゃあ!時間が空いたら見せて!!それなら問題ないわよね!?」
「えぇ、構いませんよ。そんな時間があれば、ですが」
「よっしゃ!じゃあ次!!」
こうして鬼灯様は早々と合格した。
だからといって、他の受験生達に何か影響があるということはなく、ちゃくちゃくとメンチは受験生達を不合格にしていった。
その後ハンゾーがスシとはどういうものかをバラしていたが、すでに合格していた鬼灯様には関係ない。それに、例えこの後スシを持っていったとしても、鬼灯様の腕前ならさっきと同じように合格をもらうだろう。
合格をもらい暇していた鬼灯様は自分用のスシを握り出した。お腹が空いてきたという理由もある。
合格者がなかなか出ない中、鬼灯様は1人でどんどん握っていき、それを黙々と食べていた。
そしてそれらを食べ終わる頃に、メンチのお腹もいっぱいになった。
「二次試験後半の料理審査、合格者は1名よ!!」
合格者が1名というのはあまりにも少ない。
もちろん、ハンター試験の合格者が0なんて年もある。でもそれは本当に適合者が居なかったのであって、今回は違う。観察力や注意力を測る試験だったのに、メンチが味にこだわりすぎたため合格者が1名になったのだ。
受験生から批判者がでたり、ハンター協会の会長が来たりと色々あったものの、結局試験はやり直しとなった。
改めて、メンチの課題はゆで卵。獲る卵はクモワシの卵である。
「あ!59番!」
鬼灯様が崖に飛び降りようとした時、メンチが鬼灯様に話しかけた。
「はい、なんでしょう?」
「あんたはさっき合格したからこの試験はやらなくてもいいわよ」
やり直しになったからといってさっきの結果が無くなるわけではないことをメンチはわざわざ伝えに来たようだ。
「わかりました。ですが、個人的にあの卵を食べてみたいので参加いたします」
「あぁ、そうなの」
けれど、鬼灯様は上記の理由から崖から飛び降りたのだった。
阿鼻叫喚地獄で落ちている人に何かを伝えるために、一緒に落ちることもあるため、恐怖心はない。糸もつかみ損ねることもなく、普通に帰ってきた。
鬼灯様、二次試験も余裕で合格。