三次試験


「残った43名の諸君にあらためてあいさつをしとこうかの。わしが今回のハンター試験審査委員会代表責任者のネテロである。本来ならば最終試験で登場する予定であったが、いったんこうして現場に来てみると……なんともいえぬ緊張感が伝わってきていいもんじゃ。せっかくだからこのまま同行させてもらうことにする」

「次の目的地へは明日の朝8時到着予定です。こちらから連絡するまで各自、自由に時間をお使い下さい」


二次試験が終わった後、受験者達は飛行船にのり、束の間の休息が与えられた。

もちろん、鬼灯様も休もうとしたのだが


「59番!」

「はい、なんですか」

「時間が出来たから、約束通りスシを握って見せて!材料はこっちで用意したから」

「あぁ、そうでしたね。わかりました」


こうして鬼灯様はスシを握ることになった。

鬼灯様がメンチと、そのついでに他の試験官達に寿司を振舞ってる時。


「ねぇ、今年は何人くらい残るかな?」

「合格者ってこと?」

「そ、なかなかのツブぞろいだと思うのよね。1度ほとんど落としておいてこう言うのもなんだけどさ」


試験官達は受験生について品定めしていた。


「でも、それはこれからの試験内容次第じゃない?」

(メンチみたいな試験官じゃ1人も残れないだろうし)

「そりゃまそーだけどさー、試験してて気づかなかった?けっこういいオーラ出してた奴いたじゃない。サトツさんどぉ?」

「ふむ、そうですね。新人がいいですね、今年は」

「あ、やっぱりー!?あたしは59番がいいと思うのよねー。本当にこのスシは美味しいわ!!」

(唯一、スシで合格してたしね)


「ありがとうございます。でもこの話、私の前でしていいんですか?」


当然の疑問だ。


「いいのいいの!試験内容をバラしているわけじゃないし。それに、あんたのスシは最高よ!あ、ねぇ名前なんて言うの?」

「私は鬼灯と言います」

「おや、変わった名前ですね」

「そういえば格好も不思議だね」


受験生について話していたはずが、どうやら試験官達の興味は鬼灯様に移ったようだ。


「そのツノ、なんだっけなぁ……あ、一角族だ。ホオズキって一角族なの?」

「いえ、私の種族は鬼ですよ」


人とのミックスですが、と内心呟きながら鬼灯様は答える。


「へぇ、鬼ねぇ。サトツ知ってる?」

「どこかで聞いたことはあります。実在してたんですね」

「そうですね。受験生と試験官が一緒にいるのはあまり良くないでしょうし、もう私は行ってもいいですか?」

「あぁ、引き止めちゃってごめんね!魚捌きといい、スシの握り方といい、素晴らしかったわよ!!」

「えぇ、本当に美味しかったです」

「試験がんばってねー」

「はい。ではまた」


こうして鬼灯様は試験官達がいた部屋から出て、ようやく休むことが出来た。いや、鬼灯様なら休まなくても問題ないのだけれど、休める時にはしっかり休む人、じゃなくて休む鬼なので、他の受験生達と同じ部屋で仮眠をとった。

そして次の日。


≪皆様、大変お待たせしました。目的地に到着です≫


船内にこの放送が響き渡った。

どうやらようやく三次試験が始まるようだ。

受験生達が降ろされたのは、塔の上。


「ここはトリックタワーっと呼ばれる塔のてっぺんです。ここが三次試験のスタート地点になります。さて、試験の内容ですが、試験官の伝言です。生きて下まで降りてくること、制限時間は72時間。それではスタート!!頑張って下さいね」


ここの床には、隠し扉がある。その扉を通って下までたどり着けば、見事合格になる。

けれど鬼灯様がこの高さから飛び降りても、きっと無事でいられるだろう。鬼の体は頑丈だ。

本人もそれを分かっている筈なのだが


(隠し扉の方からいきましょうか。こちらの方が楽しそうです)


結局鬼灯様も他の受験生と同じルートで行くことにしたようだ。

鬼灯様はすぐに隠し扉を見つけ、下に降りた。


「獣の道?」


その部屋の看板には、獣の道。世界中から集めた猛獣達と戦い、勝たなければならない。と書いてあった。

ということで鬼灯様は扉を潜って、さっそく最初の猛獣と対面した。

けれどその猛獣は鬼灯様と戦うことなく道を譲った。

理由は簡単。鬼灯様強さを本能で感じ取って、勝てないと判断したからだ。

以前、桃太郎印のキビダンゴが白澤と桃太郎との会話で上がったのを覚えているだろうか。

その時鬼灯様は言った。


「あんなもんなくても調教すればいい」


まさにその通りなのだ。

だいたいの猛獣が鬼灯様には逆らわない。というか逆らえない。

鬼灯様のヤバさが感じ取れない雑魚や狂った奴でも、鬼灯様が殺気を出せば怯む。

そんな感じで毛がある猛獣にはモフモフしながら、鬼灯様は進んだ。

動物好きの鬼灯様にとってこの獣の道は幸せの道だった。

そして最後の階。


「ここまで来るとはな。俺で最後だぜ」


最後の相手は理性を捨て、人殺しとなった獣、人間だ。


「生者とはあまり戦いたくないんですけどねぇ。試験なら仕方ありませんか」

「俺に勝ったらここを通してやる」

「わかりました。では」


鬼灯様は持っていた金棒を相手に向かって投げた。それは見事に相手の頭にクリーンヒット。相手は気絶した。

鬼灯様の勝ちだ。

そして鬼灯様は一階にたどり着いた。


「59番、ホオズキ。三次試験通過第2号!!所要時間8時間27分!!」


どうやら鬼灯様はなかなかに早い到着だったようだ。まぁ、猛獣のところは全て素通りかモフモフするだけ、唯一戦った最後の囚人も勝負は一瞬で終わったのだから、早く到着したのは当たり前かもしれない。

そのまま鬼灯様は誰にも話しかけられることなく終了時間まで待ち


≪タイムアップ!!3次試験、通貨人26名!!(内1名死亡)≫


こうして三次試験が終わった。

鬼灯様は一次、二次と続き、これも楽々合格だ。というかむしろ、鬼灯様が苦戦するものなんてあるのだろうか。