四次試験


さて、次は四次試験。


「諸君、タワー脱出おめでとう。残る試験は4次試験と最終試験のみ。四次試験はゼビル島にて行われる。では、早速だが……」


そこまで言うとリッポーはパチンと指を鳴らして、クジを持ち出して来た。


「これからクジを引いてもらう。このクジで決定するのは狩る者と狩られる者。この中には25枚のナンバーカード……すなわち今残っている諸君らの受験番号が入っている。今からそれを1枚ずつ引いてもらう。それではタワーを脱出した順にクジを引いてもらおう」


鬼灯様は2番目にクジを引いた。

引いた番号は59番。なんと自分の番号だった。

だからといってその場で試験官に何かを尋ねることはなく、その場を次の受験生に譲った。

そして全員がクジを引き終わると、またリッポーは説明を開始した。


「全員引き終わったね。今諸君がそれぞれ何番のカードを引いたのかは全てこの機械に記録されている。したがって、もうそのカードは各自自由に処分してもらって結構。それぞれのカードに示された番号の受験生がそれぞれの獲物だ。奪うのは獲物のナンバープレート。自分の獲物となる受験生のナンバープレートは3点。自分自身のナンバープレートも3点。それ以外のナンバープレートは1点。最終試験に進むために必要な点数は6点。ゼビル島での滞在期間中に6点分のナンバープレートを集めること」


そしてようやくリッポーの長々しい説明が終わった。

次はゼビル島へ向かう船に乗り込むのだが、その前に鬼灯様はリッポーの元へと訪れていた。

番号が被った為である。


「すみません。獲物の番号が自分の番号と被ってしまったのですが」

「ん?なんだ自分の番号を引いたのか。運がいい。なら君はそのナンバープレートを持っているだけで6点だ。他の人からすれば同じ1点なのだから、油断しないように」

「わかりました」


どうやらハンター試験は鬼灯様に優しく出来ているようだ。

いや、ただ単に運がいいだけなのかもしれないが、ここまでの試験は鬼灯様にとっては簡単すぎたし、これからの試験もスタート時から6点分揃ってることを考えると、他より有利だろう。

そんな鬼灯様はハンター試験に対して生温いと感じていた。

もし鬼灯様が試験官側なら、それはそれは肉体的にも精神的にもキツい試験がなされていたことだろう。

今、受験生という立場じゃなかったら、試験に口を出してもっと厳しくしていたところだ。というか、ここが地獄だったら一次試験の内容から厳しくしている。

鬼灯様は自分だったらこうするのに、ということを考えながら、2時間の船旅を過ごした。

ゼビル島にて。


「それでは、三次試験の早い人から順に下船していただきます!1人が上陸してから2分後にスタートする方式をとります!!滞在期限はちょうど1週間!!その間に6点分のプレートを集めて、またこの場所に戻ってきて下さい。それでは、1番の方スタート!!」


そして鬼灯様は2番目にスタートした。

すでに6点分ある以上、他の受験生を襲う必要はない。あとは1週間のサバイバルをするだけだ。

そのサバイバルすらも、電気がなかった時代をさらに遡ってまともな家がなかった時代を過ごしてきた鬼灯様にとっては、余裕だった。

鬼灯様は島に上陸してから1週間の滞在場所探しをやり出した。

それから1日ほど歩いて、鬼灯様は近くに川が流れている洞窟を見つけた。

川には魚が泳いでいるので、水はもちろんのこと、食料にも困る事はない。枝はそこらへんに落ちているし、石だってあるから火も起こせる。洞窟に入れば、警戒するのは入り口のみとなる。

なかなか良い条件の場所と言えるだろう。

そうして鬼灯様は悠々自適な生活を始めた。

早寝早起きをして、食事もキッチリ三食とる。空いた時間はこの世界にいる生物の観察をする。

そんな感じに時間を消費して、5日が経った。

鬼灯様はその日をきちんと夜ご飯を食べていた。といっても、川の魚を枝にぶっ刺して焼いただけの簡単なものだ。

その場所へとキルアがたまたまやってきた。

目と目が合う。


「……あ、食べますか?」

「……いいの?」


一瞬警戒したキルアだったが、がっつりとくつろいでいる鬼灯様を見て、素直を食料を受け取ることにしたようだ。


「えぇ、構いませんよ」

「どーも。俺はキルア、あんたは?」

「鬼灯と言います」

「ふーん……」


この2人、驚くほど会話が続かない。

ずっと無言でいるのは辛かったのか、キルアは会話を切り出した。


「ホオズキはさ、もう6点分集め終わってんの?」

「はい。運がいい事に自分の番号を引き当てましたので、最初から6点分揃ってました」

「へぇ、そんな事もあるんだな。ちなみに俺ももう終わってるぜ!」

「そうでしたか。それはよかったですね」

「まぁターゲットが雑魚だったからな」

「キルアさんはお若いようですが、おいくつですか?」

「12歳!あんたは?」

「だいたい25くらいですかねぇ」

「だいたい?」

「えぇ、だいたい、です」


もちろん鬼灯様は2000年以上生きている。けれどそんな事馬鹿正直に言えないので、外見年齢の25歳と言ったのだ。だいたいとついたのは、場合によって変わるから。今回は20代〜30代の間の25ということにした。


「もっと若いかと思ったけど、案外年いってんだな」

「確かによく若く見られますね」


と、まぁこんな感じに2人の会話はじわじわと広がっていった。

珍しい服装に珍しい武器、人ではあり得ないツノ、鋭い爪。二次試験は1人でスシを合格しており、三次試験の順位はヒソカの次。四次試験の今は周りを警戒する事なく大胆にもくつろぎながら過ごしている。

キルアが鬼灯様に興味を持たないわけがなかった。

こうしてキルアは鬼灯様に色々質問をして、鬼灯様もそれを答える形で最終日まで一緒に過ごした。

暗殺者といての教育を受けて警戒心の強いキルアと、強者過ぎて周りを警戒していない鬼灯様の相性は案外良いのかもしれない。


≪ただ今をもちまして四次試験は終了となります。受験生のみなさん、すみやかにスタート地点へお戻り下さい≫


最終日、鬼灯様とキルアはこの放送がかかる頃には、すでにスタート地点付近に来ていた。期限は1週間と言われたものの、具体的な時間はわからなかったから、昨日の夜から事前に移動を開始していたのだ。


≪これより、1時間を帰還猶予時間とさせていただきます。それまでに戻られない方は全て不合格とみなしますので御注意ください。
なお、スタート地点へ到着した後のプレートの移動は無効です。確認され次第、失格となりますので御注意下さい≫


スタート地点に続々と合格者があつまる。


「では、到着した人からプレートを確認しまーす」


そして全員のプレートが確認し終わった。


「以上!10名の方が四次試験の合格者でーす」


鬼灯様の4次試験はキルアと少し仲良くなって終わった。