最終試験
最終試験は面接から始まった。
「そこに座りなされ」
「はい、わかりました」
「いくつか質問に答えて貰おう。まず、なぜハンターになりたいのかな?」
「試験を受けたのはハンターというのもがどういうものなのか知りたかったからです。ハンターになりたいと思っている訳ではありません」
というか完全に鬼灯様は試験を楽しみに来ている。受験理由がキルアとほぼ一緒だ。
「なるほど……では、おぬし以外の9人の中で一番注目しているのは?」
「99番ですね。少し会話をしたので」
鬼灯様はキルア以外と関わりを持って居なかったので、キルアしか印象に残って居ない。
「ふむ…では、最後の質問じゃ。9人の中で今、一番戦いたくないのは?」
「出来れば全員と戦いたくはありませんね」
もちろんその理由は全員生者だからだ。
地獄に落ちた亡者ならともかく、生きている人間をボコボコにする趣味はない。
「ご苦労じゃった。さがってよいぞ」
こうして面接はとりあえず終わった。
それから3日後。
「さて諸君、ゆっくり休めたかな?ここは委員会が経営するホテルじゃが、決勝が終了するまで君達の貸し切りになっておる」
受験生達は広い部屋に集められていた。
「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。その組み合わせは、こうじゃ。」
そうして発表されたのは、随分と偏ったトーナメント表だった。
「さて、最終試験のクリア条件だが、いたって明確。たった1勝で合格である!!」
トーナメント表によると、鬼灯様はクラピカとヒソカの負けた方と戦う事になっている。
「つまりこのトーナメントは勝った者が次々と抜けていき、負けた者が上に登っていくシステム!この表の頂点は不合格を意味するわけだ。もうおわかりかな?」
「要するに、不合格はたった1人ってことか」
「さよう。しかし誰にでも2回以上の勝つチャンスが与えられている。何か質問は?」
「組み合わせが公平でない理由は?」
「うむ。当然の疑問じゃな。この取り組みは今まで行われた試験の成績をもとに決められている。簡単に言えば、成績のいい者にチャンスが多く与えられているということ」
「それって納得出来ないな。もっと点数のつけ方とか詳しく教えてよ」
キルアが不満を漏らすが、鬼灯様は特に文句はない。
白澤より下に見られるのは嫌なのであって、他の人は何とも思ってないのだ。また、トーナメント表は今までの成績を表しているのであって、悪口を言われたわけではない。キレる理由がなかった。
その後、ネテロ会長によって詳しく採点方法が語られた。
トーナメント表では真ん中辺りなので、鬼灯様はそこそこ注目されていたのだろう。
スシでの合格や三次試験で2位で合格していたが、一次試験は特に何かあった訳でもなく、四次試験はそもそも6点スタートというのがあったので、だいたい正当な基準と言える。
そしてようやく試合が始まった。
「それでは、最終試験を開始する!!第1試合ハンゾー対ゴン」
ハンゾーとゴンの力量はかなり差があり、一方的な試合になった。
見ていて痛々しいほどにゴンがやられているのだが、鬼灯様は何も思わない。
言うまでもなく、地獄の方がもっとヤバい拷問をしているからだ。
というかそもそも、生きている人間に口出しする気はない。
結果この試合は長時間続いたのち、ハンゾーがゴンにまいったと言わせるのを諦めて、ゴンの勝ちで終わった。
そして相手が負けを認めたのに自分の気持ちいいように勝ちたいと言ったゴンはハンゾーに気絶させられた。
さて、次の試合である。
クラピカ対ヒソカだ。
この試合は2人がしばらく戦った後、ヒソカがクラピカに何かを告げ、ヒソカが負けを認めて終わった。
サクサク行こう。次はハンゾー対ポックル。
全試合で圧倒的な力を見せたハンゾー。彼がお前には遠慮しないと言ったところでポックルはあっさりと負けを認めた。
その次はようやく鬼灯様の出番だ。相手はヒソカ。
この勝負を簡単に言うとしたらこの世界の頭のおかしい奴vs.地獄のヤバイ鬼といったところだろうか。
「続いて第4試合。ヒソカ対ホオズキ、始め!」
「相手がキミでよかったよ。ずっと気になってたんだよね♡」
「そうですか」
試合の合図はあったものの、2人はその場から動かない。
正確には鬼灯様は攻撃を仕掛けようとしたけれど、ヒソカが喋り始めたから辞めたのだ。
「僕は相手が強いか弱いか。弱くてもこれから成長するかしないかがだいたいわかるんだけどさ。ビックリしたよ。キミからは何も感じない。こんなの初めてだ♡」
天使、キョンシー、魔女、鬼神。あの世のことわざで逆らわない方がいいものを意味する。鬼灯様は挙げた4つの中の内の一つの鬼神。そんな鬼神の中でも鬼灯様は色々とヤバい鬼だ。
さらに言うなら年齢差は倍を通り過ぎて約100倍。生きていた年数が違いすぎる。
もちろん白澤のように鬼灯様と渡り合える神はいるし、力ではキョンシーには敵わない。だから鬼灯様は最強というわけじゃない。
それでも鬼灯様を戦闘狂であるとはいえただの人間が推し量ろうというのが間違いなのだ。
「あの、試合始めないんですか?」
「けど、キミが強いか弱いか、それがこの試合でわかるね♡でも、キミの力量がわからないから、初手はキミにあげるよ♠」
「では、遠慮なく」
初手を貰った鬼灯様は容赦なくヒソカを金棒でぶっ飛ばした。飛ばされたヒソカは壁にあたり、止まった。壁は粉々に砕けている。
ヒソカとしては、この一手で鬼灯様の力量をだいたい見分けるつもりだったのだろう。けれど、手首の力だけで大理石にボールペンをぶっ刺せる力の持ち主を舐めてはいけない。
ヒソカが念能力者じゃなかったら、もれなくあの世行きだったところだ。
「あ、そういえばこの試合。相手に負けを認めさせないといけないのでした」
ぶっ飛ばした後に、鬼灯様はその事に気付いた。
けれど安心してほしい。ヒソカはまだ意識がある。
「……クククッ驚いたよ。キミにそんな力があるなんて。あーぁ、我慢してたのに……興奮しちゃうじゃないかぁ」
ヒソカはフラフラと瓦礫の中から這い上がってきて、そんな事を言い出した。
「あぁ、でも。ホオズキとはルールなんて無い、お互い本気をだした命がけの遊びをしたいな♡」
もちろんヒソカの言う遊びとは殺し合いの事である。本気をだした、というのも、お互い念能力を使って、という意味だ。
「だからここは一旦ひくよ。僕の負けだ♡」
「しょ、勝者ホオズキ!」
こうしてちゃんと2人がちゃんと戦う前に、試合が終わった。
鬼灯様、見事ハンター試験に合格だ。
その後も他の受験者達の戦いは続く。
ポックルと対キルアはやる気のないキルアが負けを宣言して負けて、ヒソカ対ポドロはヒソカがポドロをボコボコにするといった一方的な試合だったものの、ポドロはなかなかの粘りを見せた後、負けを認めた。
そしてキルア対ギタラクル。ギタラクルは顔に刺していた針を全て抜き、正体を明かした。
ギタラクルはキルアの兄のイルミ。そう教育を受けてきたのだから、キルアはイルミに逆らえない。キルアは負けを認めた。それ以降キルアは一言も言葉を発さなかった。
鬼灯様は特に何もしない。
良い人間であれ殺人鬼であれ生きている人間は全員平等に見てるし、地獄の者が生者に影響を与えるのは良しとしないからだ。
相手が生者なかぎり、たとえ目の前で誰かが死にかけてても、悪に手を染めようとしてても、鬼灯様は何も言うことはない。
もちろん地獄に来たのなら生前の罪はしっかりと償ってもらう。
さて、その次の試合。ポドロ対レオリオだ。キルアが試合に乱入し、ポドロを殺した事で強制終了した。
また、キルアがポドロを殺したため、失格。
これにより今年のハンターが出揃った。