六道骸、来る!!
そんな中、またクラスに新しい人が来た。
「今日から一週間、このクラスに交換留学生が滞在することになった」
「イタリアから来た六道骸です。一週間という短い期間ですがよろしくお願いします」
なんとびっくり、骸だった。姿は幻覚で誤魔化しているのか、10年前の姿だ。フランも骸が来ることを聞かされてなかったのか、珍しく驚いた様子を見せている。
それと同時にE組メンバーも驚いている。なんせ名字が六道だ。イタリアから来てる事もフランと一致している。フランと何か関係あるのではないかと考えるのが普通だ。
「烏間先生!六道くんはフランくんと何か関係あるんですか?」
クラスメイトの1人が質問したが、それに答えたのはフランだった。
「ミーはあんなパイナップル知りませんー」
確かに、骸は少々、いやかなり独特な髪型をしている。パイナップルと言われれば納得できてしまう。でも、そんなことを言っていいのだろうか。本当に知り合いじゃなかったらかなり失礼なことを言っている。
いや、初対面の時も同じように反応していたのだけれど。
するとそこで骸から否定が入った。
「何を言ってるんですか?フラン。後で覚えてください。この前の分もです。それと、私とフランは血は繋がってませんが身内です。私自身は何もしていないのですが、フランが相当理事長に何かやらかしていたようで、身内だと知った瞬間E組行きを言い渡されました。本当に何をやらかしたんでしょうねぇ」
一言では説明出来ないくらい色々である。
骸の言葉に普段のフランの行いをそれぞれ思い出したのか、みんな納得している。そして同情している。イタズラ好きでよくやらかしてるフランが身内なんて……と。
「まぁ兎に角、短い間だが訓練にも暗殺にも参加することになっている。みんなフォローしてやってくれ」
とても微妙な雰囲気を烏間先生が強引に締めた。
「ヌルフフフ、ではよろしくお願いします、六道くん」
「えぇ、よろしくお願いします、殺せんせー」
そう言って骸が差し出した手を、殺せんせーはなんの疑いもなく掴んだ。
骸は強く掴むと、思いっきり引っ張り、体勢を崩させる。そして反対の手で素早く足を一本切り落とした。追撃しようとするも、もう一振りする頃には殺せんせーは距離を取っていた。
例えマフィアだとしても、10年前世界大戦を起こそうとしていたとしても、長らく捕まっていたとしても、潜入している今はフランと違って骸は表面上優等生だ。
そんな優等生がこんな事するとは思わなかったのだろう。クラスの全員が驚いている。
「やはり、一本くらいなら簡単に切り落とせるんですね。聞いていた通りです」
「にゅにゃ!?だ、誰がそんな事を!?」
「フランですが?」
「ちょっとフラン君どういう事ですか!?」
「タコせんせーについて聞かれたからそのまま思った事を言っただけですよー。実際、一本目までなら余裕じゃないですかー」
足一本すら落としたことのないメンバーを敵に回す発言だ。
「フラン、事実でもそんな事言ってはいけませんよ。余裕と言われた殺せんせーにもまだ攻撃を当てた事すらない人達に失礼です」
そしてこの煽りである。
骸とフラン。見た目全然違う二人だが、E組はこの短時間でちゃんと身内なんだという事を認識した。
「ろ、六道くん!?」
「フランとかぶるので骸でいいですよ。それより、もう授業始まってますよね?」
「そうでした。では骸くん、あそこの空いてる席に座ってください」
「わかりました」
「それでは遅くなりましたが、出席をとります。赤羽君」
「はーい」
「磯貝君」
「はい!」
と、そんな感じに骸が来てからの学校生活が始まった。
その日の授業中。
「暑ッぢ〜……」
「地獄だぜ……今日びクーラーのない教室とか……」
「だらしない……夏の暑さは当然の事です!!温暖湿潤気候で暮らすのだからあきらめなさい。ちなみに先生さ放課後には寒帯に逃げます」
「「「ずりぃ!!!」」」
そんな会話がされていた。
骸がやって来たのは夏休み前。ちょうどプール開きがある日だったようだ。
けど、プールは本校舎にしかない。授業中ならプールに入れるのでまだマシだが、この暑さの中歩く行きと帰りは地獄でしかない。
殺せんせーに運んでもらう事を前原君が頼むも当然のように断られた。
そうしていても、暑い事には変わりない。
「全員水着に着替えてついて来なさい。そばの裏山に小さな沢があったでしょう。そこに涼みに行きましょう」
殺せんせーは代わりにそう提案した。
それから男女に分かれて水着に着替え、沢へ向かった。
「あれ?フランくんそれ体操着だよね。水着は??」
「水着は忘れましたー」
「ちゃんと先生の話聞かないから忘れるんだよ」
「えー、ちゃんと聞いてましたよー?」
「そっか」
フランと渚君はそんな会話をしながら進む。
「そういえば渚君とフラン、この前すごかったらしいじゃん。見ときゃ良かった、二人の暗殺!」
「ホントだよー。カルマ君面倒そうな授業はサボるんだから」
そこにカルマ君と茅野さんも会話に混ざってきた。
「えー、だってあのデブ嫌だったし」
「カルマ君、まだまだですねー。嫌だったらイタズラすればよかったんですよー」
「そうだね。フランの話を聞いてそうすれば良かったと思うよ。今度嫌な奴いたらそうするわ」
「二人ともほどほどにね」
「ねー、特にフラン君」
「おや、フランが何かしたんですか?」
フランは鷹岡にやらかした事を詳しく報告しておらず、骸は何も知らなかったようだ。怒られるとわかっていて、フランが先生と生徒ほぼ全員の前で幻術をつかったなんて報告するわけがなかった。
「なんでもないですー。それより着きましたよー」
フランは強引に誤魔化した。
着いたのは小さな沢、ではなく沢をせき止めて作った自然のプールだ。
殺せんせーの説明を聞いて、みんな飛び込んでいった。
そんな中、このクラスに来たばかりで今日プールがあると知らずに水着を持ってこれなかった骸と、水着を普通に忘れたフランは端っこで会話をしていた。
「さて、フラン。先程の話を詳しくお聞かせください」
「えー、なんのことですかー?」
「とぼけても無駄ですよ。あなたが鷹岡明にしたことです。先程の様子では僕に報告してない事がありますよね?」
「知りませーん」
「はぁ……今回は目を瞑りましょう。次はないですからね?」
「了解ですー。それよりなんで
「報告にあったシロという人物を調べる為と、生徒達が今はどんな様子なのかを見る為です。まぁ、一番の理由は貴方がちゃんと生徒達に紛れて任務を出来てるかという確認なんですけどね」
「酷いですねー。ミーはちゃんとやってますよー。てゆうかそれなら
「沢田綱吉がちゃんとやってるか不安になったのです。あのアホ牛は、しょっちゅう10年前と入れ替わってるので却下になりました。クロームでは貴方がやらかしていたとしても誤魔化されてしまうでしょう。なので僕が選ばれました」
「めんどくさいですねー」
「フランがしっかりしていればこんな姿でこんなところに来なくて済んだんですけどね」
「そんな事よりずっとここにいると怪しまれるのでミーはもう行きますねー」
このままでは追加で色々と文句を言われかねないと察したフランは話を強引に切り、早々に逃げていった。
そんなフランを見送った骸はやれやれといった雰囲気でため息をつき、プールの方へ足を運んだ。
さて、逃げたフランはというと、
「タコせんせー、水着を忘れてプールに入れなかった哀れな生徒と遊んでくださーい」
「ちょ、それフラン君のことですよね!?その手に持ってるものは何ですか!?」
フランが水鉄砲を持ってると気づいた殺せんせーは明らかに焦った姿を見せている。
「水鉄砲ですがなにかー?」
「なんで水着は忘れて水鉄砲は持ってるんですか!」
「夏だからですよー」
夏だから水鉄砲を持ってるという理屈は全くわからないが、とりあえずフランはそう言いながら、殺せんせーに向けて水鉄砲を撃った。
「きゃんっ!」
「えっ……」
「何、今の悲鳴」
普段ではあり得ない声に、クラス全員が注目している。そこに、静かに殺せんせーに近づいたカルマ君が、殺せんせーを水へ落としにかかった。
「きゃあ!揺らさないで水に落ちる!!」
梅雨の時からフランが抱いていた疑念。今、クラス全員一致して確信に変わった。
殺せんせーは水が苦手、と。