留学生
「今日から来た、イタリアからの留学生を紹介する」
「六道フランと申しますー。皆さん仲良くして下さーい」
この3年E組に、留学生が来た。
中性的な顔、サラリと肩まで伸びた髪、翡翠色の目、そして……リンゴの被り物。
(((なんで!?)))
クラスの心の声が一つになった瞬間だった。
クラス中がザワザワと騒ぐなか、1人の生徒が手を挙げて言った。
「烏間先生ー!このクラスに来たってことは、フラン君は殺し屋なんですか?」
クラスのムードメーカーとも言える、茅野さんだ。
「いや、彼は殺し屋ではない。普通の留学生だ。このクラスのことも、事前に説明してある」
「えっ!?じゃあなんでE組に来たんですか??」
「それは、だな……」
いつも物事をハッキリ言う烏間先生が言葉を詰まらせた。そのことに、クラスのみんなはフランによっぽどの事情があるのかと思ったのだが……
「それはですねー、ミーが理事長さんに挨拶に行ったときのことですー。ミーのちょっとしたイタズラ心でアマガエルを理事長さんに投げつけたんですけどねー、なんか理事長さん思いっきり驚いちゃったみたいで、椅子から転げ落ちちゃったんですよー。それをミーが馬鹿にしたら、なんかE組行きにされちゃいましたー。ほんっと心狭いですねー、あの理事長」
と、フランがとんでもない事を呑気に言った。
(((それは誰でも怒るよ!!)))
そして、それを聞いたクラス中の心の声がまたまた一つになった。
フランとしては、どうやってE組に行こうかなー、なんて考えてる中で、いつも通り他人に仕掛けたイタズラであっさりE組行きになったので、ちょっと拍子抜けしているところなので、大したことはやってないと思っている。
「と、いうことだ。ちょっと変わってるところもあるが、仲良くしてやってくれ」
「ヌルフフフフ。それではフラン君、よろしくお願いしますね」
「わー、ほんとにタコなんですねー。烏間せんせー、このタコ暗殺すればいいんですよねー?」
「あぁ、そうだ」
「んー、では、タコせんせー、あっち向いてホイ!」
フランは急に殺せんせーに向かってあっち向いてホイをやりだした。指は右を向いている。
「にゅにゃ!?」
急にあっち向いてホイをやらされた殺せんせーは反射的に左を向いた。殺せんせーは完全に焦っている。
その隙をついて、フランは事前に貰っていたナイフで、右側の足を切り落とした。さらに、追撃をしようとしたが、さすがに殺せんせーは一本切り落とされた時点で後ろに思い切り下がっていたので、それは空振りに終わった。
「おー、タコせんせー速いですー。これ、殺せなくないですかー?」
「い、いきなり何するんですか!?フラン君!!」
「死ななかったからいいじゃないですかー。それに、暗殺っていきなりやるものですよねー?」
E組に突如来た留学生。中性的な顔、サラリと肩まで伸びた髪、翡翠色の目、そして、リンゴの被り物。間延びした喋り方
に、理事長相手にイタズラを仕掛けE組に落ち、転校初っ端から殺せんせーの足を切り落とした。なかなかの曲者のようだ。