質問大会

フランのいきなりの行動に、クラス中がまた騒ついた。今のナイフの動きは素人のものではなかったし、カルマの次に殺せんせーの足を切り落としたのだから、当たり前かもしれない。


「六道君、その技術はどこで?」

「イタリアは日本みたいに安全なところじゃないんですよー。これくらい、誰でもできますー。あ、それとミーのことはフランって呼んで下さーい。あ、烏間せんせーだけじゃなくて、他の皆さんもお願いしますー」

「わかった。これからはフラン君と呼ぼう」


烏間先生から見れば、フランの動きは誰でもできるものではなかった。でも、事前にフランのことを調べた時に、何も出てこなかったのだ。だから、後でまた詳しく調べようと心に秘めながら、とりあえず今は納得することにした。


「で、おまえはいつまで震えてるつもりだ。さっさと授業しろ」


実際には震えてはおらず、ただフランのことを警戒していただけなのだが、烏間先生には関係ない。なぜなら、もう授業が始まる時間をとっくに過ぎてるのだ。これがさっきフランを追求しなかった理由の一つでもある。

烏間先生の一言によって、ようやく授業が始まった。


「ヌルフフフフ。今日は英語からでしたねー。せっかくなので、転校生のフラン君に英語で質問してみましょう」

「え、それミーの負担めっちゃありません?」

「おや、フラン君は語学が堪能だとお見受けしたのですが、先生の勘違いでしたか?」


と、殺せんせーは言っているが、実際のところ、さっき一本切られたお返しみたいなものだ。流石殺せんせー、器が小さい。


「そりゃあいろいろ話せますけどー……わかりましたー、やればいいんでしょ、やれば。殺せんせーも心狭いですねー」

「そ、そんなことないですよ!?とにかく皆さんは一人一問フラン君に質問してください。主席番号順でいきましょうか」


こんな感じで始まった英語の質問大会。まずは珍しく朝からちゃんと学校に来た、カルマ君からだ。


「えーと、じゃあ、How strong is Mr. Fran?(フラン君はどれくらい強いの?)」

「I do not know that either. Is not it quite strong?(それはミーにもわかりません。結構強いんじゃないですか?)」


フランはヴァリアーにいるのだから、当然英語も流暢に喋れる。そこらへんにいる英語教師より綺麗な発音、というか普通にネイティヴな発音をしている。

次は出席番号2番、磯貝君の番だ。


「んーと、How many languages do you speak?(何ヶ国語喋れるの?)」

「I do not know because I have never counted, but I can speak at least seven languages.(数えたことがないのでわかりませんが、最低でも7つ以上は話せますねー)」


英語が苦手は者も、seven languagesの部分は聞き取れたようで、これには皆ビックリだ。イタリアから来たのだから、当然イタリア語は話せるとして、自己紹介の時は普通に日本語を話していたし、今も英語は普通に話している。最低でも3つは話せるとわかっていたが、それでも皆7種類もの言語を喋れるとは思わなかったのだ。

これにビックリした次の質問者、岡島君はこう聞いた。


「What language can you speak⁉(何語が喋れんの!?)」

「Well, in French we speak Italian, Japanese, English, Chinese, Korean, German, Spanish, Swedish, Greek, and so on, but it is quite easy to talk to others. Oh, I ordered seven as usual.(えーと、フランス語にイタリア語、日本語、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、スペイン語、スウェーデン語、ギリシャ語など、代表的なのはこれくらいですが、まだまだ他にも喋れますよー。あ、普通に7つすぎてましたねー)」


更にビックリである。7つ以上とは言っていたが、実際には10以上だったのだから。クラスメイト達はフランは頭がいいのかと思い始めた。

次は成績があまり良くない岡野さんだ。


「何を聞けばいいんだろう……あ!Do you like apple?(りんご好き?)」

「It is normal.(普通ですねー)」

「あ、待ってください岡野さん。今のappleはsをつけて複数形にしないといけません。フラン君もスルーしないでくださいよ」

「あ、はい!sですね!!」


と素直に返事をする岡野さんに対してフランは…


「いちいち指摘してたらキリがないじゃないですかー。それに、言葉なんて通じればいいんですよー」


と不貞腐れていた。

こんなにめんどうな事になるなら、一本足落とさなきゃよかったなーなんて少し後悔しながら、しぶしぶ次の質問に答える。


「What is your blood type?(フラン君の血液型はなんですか?)」

「I do not know.(知りませーん)」

「What is your hobby?(趣味は何?)」

「It is a prank.(イタズラですー)」

「What is your favorite food?(好きな食べ物は?)」

「Nothing in particular.(特にありませんねー)」

「What is your birthday?(あなたの誕生日は?)」

「It is a secret.(内緒ですー)」


最初はちゃんと答えてくれていたフランだったが、ずっと受け答えしているうちにめんどうになったのか、段々適当に答えるようになっていった。

それでも質問大会は終わらない。


「What is your favorite sport?(好きなスポーツは?)」

「Nothing in particular.(特にありませーん)」

「Do you like konchuu?(昆虫は好き?)」

「にゅにゃ!?倉橋さん、konchuuは英語じゃありませんよ。分からないからって誤魔化さないで下さい」

「はーい。じゃあ殺せんせー、昆虫は英語でなんていうんですか?」

「昆虫は英語でinsectsと言います。それでは今の英文をinsectsに直して言ってみましょう」

「えっと、Do you like insects?」

「少々発音が怪しいですが、まぁいいでしょう。ではフラン君、続きをお願いします」

「えー、もうミー疲れたんですけどー。まだやるんですかー?」

「もちろんです。授業ですので」


どうやらまだ殺せんせーは一本切ったことを許してないようだ。授業と言われてしまえはフランも断れず、しぶしぶ返答した。


「I like to use it as a prank.(イラズラとして使うのは好きですよー)」

「Why can you speak so many different languages?(フラン君はなんでそんなに色々な言語を喋れるの?)」

「I remembered it when I noticed it.(気づいた覚えてましたー)」


と、こんな感じにテンポ良く質疑応答は続いたが、それでも英文を間違える人は何人かいて、それを殺せんせーがいちいち訂正し、やり直しているうちに時間は過ぎ、最後の人にたどり着く前にチャイムは鳴った。


「では、今日の英語はこれで終わりです。また次回続きをやりましょう」

「えー、断固拒否ですー。もうミーはやりませーん。やれって言われても全部I do not knowで答えますからー」

「それは困りますねぇ。次回までにどうするか考えて起きましょう。それでは号令をお願いします」

「きりーつ!れい!!」

「「「ありがとうございました」」」


こうして、フランにとっての初めての授業が終わり、潜入任務が始まった。

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