フラジール/syp


路地裏で俺は人を殺した。殺した人が何をしたかなんて俺は知らない。ただの仕事である。いつも通りに命令されていつも通りに仕事を遂行させただけやった。何も考えずにただ、人を殺すだけ。その人が命乞いをしていても怯えていてもただ、殺すだけである。それが命令されたか。

一人の少女が路地裏の入り口で立っている。その少女は俺が殺した死体を見ても怯えることなくそこで立っているだけである。

こんな現場を見れば普通は怯えるはずなのに何故か彼女は無頓着である。俺は一歩、一歩と歩いてその少女に近づくが少女は何ものにも反応しない。近くで見ると石膏のような美しき肌に絹のような美しき髪の毛に何色にも染まらない漆黒の瞳を持つ少女である。だけどもその少女の瞳には光が一切入ってない。その少女の瞳には俺が殺した死体のみが映っている。

「何見てるんっすか。そんなに死んだ死体を見ててもそれは帰ってこないっすよ。そんなに見ても変わらないっすよ。」

ジャケットの内ポケットの中からショートピースを口に咥えて火をつける。人を殺した後は何故かショートピースを不味く感じてしまう。

「それは分かってます。なんで、この人は殺されたんですか。」
「ただ、依頼を貰って命令されたから殺したんっすよ。」
「なるほど...」

少女はポケットからメモを出してきて俺が言ったことをメモしている。殺人に興味あるんかな....だけどもどうしてそんなものに興味があるのか。俺は少女の考えていることを気になってしまう。

「なぁ、なんで君はそんな死体をマジマジと見れるんか。そんなもんに良く興味が持てるっすね」

「興味そんなんじゃない研究をしている。自分が幸せに死ぬ方法。どうしたら幸せと思えるような死に方をできるのかを....醜くく死ぬよりも綺麗に咲いて死にたいと思うでしょ。死にたいなんて思わないけど美しくこの世を立ち去れるのなら素敵じゃない」

その少女は淡々と言う。
俺はまるで映画のワンシーンを抜き取られたような感じに見えてしまう。俺は吸っていた煙草が口から勝手に落ちてしまった。そのように美しい少女から目を離せなくなってしまっている。何処にもいるような女性とは全く違う。少女には生きる意味と言うもの。存在意義が無いように思えてしまう。

「そうっすね」

死体を見るのが飽きたのか何処かに行こうと死体に背を向けて歩いて何処かに行こうとしている。そんな少女を腕を俺は無意識のうちに掴んでしまっていた。あの瞬間、あの言葉、少女の言葉に俺は堕ちた。

「なに」
「あっ、いや。なんもないっす」
「そう。またどこかで」

少女の腕を離してしまう。その少女の後ろ姿をマジマジと見つめることしか出来ない。俺はこの日を気に少女に執着してしまう。少女のまたどこかでと言う言葉に淡い期待をして誰かを殺せばその少女がやってくるんじゃないかと淡い期待をしながらまた一人、また一人と殺していく。俺は人を殺す時はどんな風にその人を綺麗に殺めれるのかを考えながら少女はどんな風に殺したら綺麗に残るのかを考えてしまう。あの、少女のおかげで気づけたんだ。つまらなかった世界に色がつき始めて来た。どんな風に殺せばあの少女は見てくれるのか。俺の元にやってきてくれるのか。俺の頭中はそんな言葉いっぱいになってしまう。

そんなことを考えてもあの少女とはあの日以来会っていない。もし、どこかで会えたなら俺はきっと....

「なんでこんなにも楽しいんやろ」

ナイフで人を殺してその家の窓から覗いて空を見る。

「今日の月は綺麗ですね」

なんていいながら青白く満月を見ているが俺は今、どんな顔をしているのだろうか。









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