白と黒

「〜〜。」
「〜〜っ!!」

本当に皆小学生か?というほど演技のレベルが高い。
これじゃあ私の棒読みが目立ってしまうじゃないか。勘弁しろ。

ついに訪れる出番に、さすがの私も緊張する。
なるべく自然に歩きだし、配置につく。

「『私は黒より白が好き。あの方のような…白が好き。』」

黒いドレスをふわりと靡かせ、私は舞う。
途中ドレスを踏みそうで焦ったが、何とか乗りきった。

そして次に、彼の出番が来る。

「『俺は白でなくていい。キミの色…黒に染まりたい。』」

「『嗚呼、いけません王子様。あなたはこんな醜い色に染まってはいけないわ。』」

「『キミは…!キミは…醜くなんてないっ…!!!』」

「『…っ!!!』」

彼の、本気とも取れる演技に、思わず本当に涙を流してしまった。
しまった。感情移入しすぎ。

それに対して降谷零は一瞬驚いた顔をしたが、すぐ演技に戻った。
さすがである。

そして、最後の場面。

「『あなたと共に在りたい。それが例え、許されないことだとしても。』」

「『俺も…同じ気持ちだ。』」

「『嬉しい…っ。』」

またしても止められなかった涙が一筋流れ落ちる。
やっぱり年をとると涙もろくなるというのは本当のようだ。

ここで王子が姫の手を取り、二人で空を見上げたところでフィナーレ…

「…っ!?」

降谷零は私の手を取ったかと思えばそれを強く自身に引き寄せ、私を強く抱き締めた。

(え…こんなの台本には…)

思わず身を捩るが、彼は離さないとでも言いたげにさらに強く私を抱き締めた。
ドクドクと忙しなく鳴る心臓に焦りが募る。

幕がそのまま閉じるまで、彼は私を抱き締めたままだった。
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