あなたの名残
幕が閉じきると彼は私からソッと離れ、ふわっと微笑む。
そして、一言「名演技だった。」と言ってステージから降りていった。

私はステージに取り残されるとヘナヘナとその場で膝をつく。
ドキドキと心臓がうるさい。顔が熱い。
何とか自分を落ち着かせようとしていると、私の周りに女子たちが集まってきた。

「ララちゃん!すっごく素敵だったよー!」
「本当に涙を流せるなんて、女優目指せるんじゃない!?」
「ていうか、降谷くんとのシーン!最高だったぁ…!」
「私の方が泣いちゃいそうだったよ〜!」
「最後のアドリブ?にドキドキしちゃった!!」

きゃーきゃーと黄色い歓声を上げている彼女らに支えてもらいながら、私は立ち上がる。
そして、着替えが終わった後も、ずっと私の心臓は高鳴ったままだった。

ふわりと香る彼の匂い。
暖かな体温。
思い出すだけで顔が赤くなるのが分かる。
ひえっ…動揺しすぎ…

あれは結局…ただのアドリブだったんだろうか…
私は複雑な心境でため息を吐く。

とにかく、先生も私たちを大絶賛してくれて、無事劇は成功したのでした。
14/22
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