ラブラブぅ
降谷零が私の前でぼろ泣きした次の日。
珍しく彼の方からの挨拶がなかった。
昨日のことが恥ずかしいのだろう。

「おはよう。」
「…お、はよ。」

だから、ここぞとばかりに私から挨拶してやった。
すると、向こうもちゃんと返してくれたので、私は満足する。
ふふっ…と私が笑うと、彼は頬を染めてそっぽを向いた。

「ラブラブぅ…」
「おい、ヒロ…!」

突然現れた諸伏景光。てか、ラブラブって…

「お前ら二人は噂の的だぜ。あの劇以来な。」
「降谷くんと私が"らーぶらぶ"ねぇ…」
「立川まで…!」
「嫌?私とらーぶらぶ。」
「なっ…!!」

カァァァっと顔を赤くする降谷零はついに不貞腐れて身体ごと私から顔を逸らした。
それを見て、私と諸伏景光は笑う。

「それにしても…もうすぐ卒業式か…」
「そうね。でも私たち、進学する中学は一緒だから寂しくはないわよ。」
「たしかに…」

私と諸伏景光が話していると、チラリとこちらを見てくる降谷零。

「中学生活も楽しみね。」

ね?と笑顔で降谷零に話を振れば、身体をこっちに向き直して「…うん。」と頷いた。

「やっぱラブラブじゃん…」

という諸伏景光の呟きは誰にも聞かれることなく消えた。
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