保健室って落ち着かない
「立川…大丈夫か?」
「えぇ、少し切れただけ。」
「少しって…こんなに血が…」

私の右手を見て眉を下げる降谷零に、何だか私が申し訳ない気持ちになる。

「今手当てを…」
「大丈夫。舐めとけば治るわ。」
「舐める…」

そう言って降谷零は私の指を自分の口内に突っ込んだ。ヌルリとした舌の感覚が私の指の傷をなぞる。

「ひゃっ…」

思わず漏れた声に、降谷零はハッとした様子を見せ、パッと離れた。

「ご、ごめん…!!」
「い、いいの…こちらこそ、変なこと言ってごめんなさい。」

降谷零はまた私の右手を取り、絆創膏を貼ってくれる。
暖かい手が私の右手を包んでいる感触が、酷く安心させてくれた。
 
「……。」
「誰が…こんな…」
「降谷くん…」

私の手を、傷に響かない程度にぎゅっと握りしめ、顔を曇らせる降谷零。
私はその両手の上に左手を乗せた。

「ごめんなさい…」
「キミが謝ることじゃない…っ!!」

そう言って降谷零は私をソッと抱き締めた。
あの日のように…

「キミの方がずっとツラいのに…」
「それでも…あなたに悲しい顔をさせてしまっているから…」
「本当にっ…キミって奴は…!」

降谷零はそう言って、腕の力を強めた。

「降谷くん…ありがとう。」
「あぁ…。」

そう言って彼は私を腕から解放する。

「先生に相談するか…?」
「きっと無駄よ。相手にしてもらえないわ。」
「……。」

私のきっぱりとした言葉に押し黙る降谷零。
彼も思う節があるのだろう。

「俺が絶対犯人を突き止める。だから…」
「ふふ…頼もしいわね。」
「…キミなぁ、もう少し事態を重く考えてほしいんだけど?」
「…だって、」
「だって?」
「あなたが守ってくれると思って…」
「…っ!」

私の言葉に降谷零は顔を赤らめる。
それ以上は何も言えなくなってしまったようだ。

「きっとすぐ収まるわ。大丈夫。」
「……。」
「さ、戻りましょ?」
「あぁ…」

そうして私たちは教室に戻ったのだった。
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