溶けていく【降谷零】
「薬、これ?」
「そうね…飲まなきゃ。」
「飲めるか?」
「えぇ…」
「……。」

ボーッと布団を見つめるララに、俺は心配になる。
顔が赤いし、具合が悪そうなのは目に見えて明らかだ。
ソロリとこちらを見るララの瞳は潤んでいて、心臓が射ぬかれるような思いをした。正直、不謹慎とは分かっていても、弱っているララが可愛く見えて仕方ない。

「ほら、薬。」
「……。」

ボーッとしているのか、薬をジッと見つめるララはそれを受け取ろうとしなかった。
そこで、俺は閃く。
漫画で見た、少し憧れのシチュエーション…その名も、口移し。
ちょっと破廉恥だけど、俺たちは付き合っているんだし、それくらいさせてくれたっていいだろう。
今思えば、俺から"抱き締めた"ことはあっても"キスした"ことはない気がするし…

俺は口内に薬を放り込み、水も含ませた。
ララはそれをキョトンとした顔で見つめている。
俺はララの後頭部に手をやり、グッと自分の方に引き寄せた。
特に抵抗のないララに、俺は噛みつくようなキスをする。
水と共に、ララの口内に流れていく薬。ララは、それを思わずといった具合に飲み込んだ。
それを確認できたにも関わらず、俺は唇を離さない。

「んっ…む…」
「ん…はぁ…」

俺は抱き寄せるように、ララ後頭部から肩に手を移動させた。
くたっと力なく俺に体を預けるララは、俺のキスを受け入れている。
しかし、さすがに苦しくなったのか、軽くトントンと俺の胸を叩いた。
そこでようやく、俺は唇を離す。

「はっ…はぁ…はぁ…」

先ほどより潤んだララの瞳が俺を見つめる。
彼女のトロけた表情に、俺の心臓は驚く程盛大に跳ねた。
口の端から溢れる唾液がまた扇情的に光る。
これ以上は…ダメだ。
自分が抑えられなくなる。

「ララ…」
「れ…くん…」

俺はララの頭を優しく撫で、ララをソッとベッドに寝かせる。
ソロリとこちらを見つめてくるララから目を逸らした。

「れい…くん…」
「…どうした?」
「そばに…いて…」

そう言ってララは自分の右手を俺の方に伸ばした。俺は咄嗟にその手を握る。

「ここに居るから…」
「ありがとう…」

ララは目を閉じて、眠りに入っていった。
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