そんな可愛い顔しないで

目が覚めると、私のベッドに頭を預けて眠る降谷零が目に入った。
まだ少しボーッとするが、だいぶ熱は下がったように思う。
私は降谷零の頭をソッと撫でた。

「ん……。」

すると、その刺激で起きてしまったようで、降谷零は目を擦りながら起き上がった。

「おはよう、零くん。」
「あ…!?俺、寝て…!?」

自分が寝てしまったことに驚いている彼。
私はその慌てように、思わず笑みを溢す。

「傍に居てくれて、ありがとう。」
「…っ。」

降谷零は頬を軽く染めてソッポを向いた。

「でも、そろそろ帰らないと…」
「そうね。ごめんなさい、引き留めちゃって…」
「いや、気にするな。」

降谷零は、そう言って私の頭をソッと撫でる。その手にすり寄ると、彼はもう片方の手で自分の口元を覆った。

「そんな可愛いことをされたら…帰りたくなくなる…」

その言葉を想定していなかった私の顔が熱くなる。
そんな私を見て降谷零はフッと笑うと、私に触れるだけの軽いキスをした。
そして、「じゃあな…」と言って去って行く。

「ズルい…」

私は彼が出ていった扉が閉まった後、へなへなとベッドに体を預けるのだった。
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