あの人嫌いよ
唐突だけれど、一つ考えていたことがある。
というのも、私は今まで降谷零を初めとする"キャラクター"たちを内心、フルネームで呼び捨てにしてきた。
けれど最近、私の中でもここは紛れもない現実だと思えるようになり、彼らを"人"として認識するようになってきている。
それでもなお彼らをフルネームで呼び捨てにする意味は、果たしてあるのだろうか…と思うのだ。
せっかく彼のことも『零くん』なんて呼ぶようになったのだし…?
それどころか付き合うことにもなったのだし…?
心の中で距離があるのは何となく寂しいというか…
いや、女々しすぎか…自分…
とりあえず、私はやっと現実を受け入れる決意を固められたと言える。
今後、彼らとどう付き合っていくか…
そして、どう向き合っていくかは、またその都度考えていこう。
ところで、私は二日空けの今日やっと学校に登校することができた。
あのイジメ?事件後初めての登校なので、正直不安しかないが…まぁ、なんとかなるだろう。
私はたどり着いた自分の教室の扉に手をかけた。
深呼吸をして、ガラッと開ける。
廊下まで話し声が聞こえるくらいざわざわしていたはずの教室内が、しーんと静まりかえった。
「あ…おはよう…。」
いたたまれなくなった私はそう言って笑う。そして、自分の席まで早足で移動しては、ソッと椅子に座った。
すると、ワッと集まってくるクラスメイトたち…って、え!?
「立川さん、大丈夫?あの後体調崩したって聞いたけど…」
「え、えぇ…少し熱が出てしまって…」
「小田くんのアレ、酷かったもんね!?でも、解決してよかった…!!」
「心配してくれてありがとう…」
「立川さん、あの時すごく堂々としてて…僕も惚れてしまいそうだったよ…」
「そう…?」
「ていうか、降谷くんと帰ったんだよね!?あの後どうなったのー!?」
「え…と、それは…」
クラスメイトたちの話題攻めに、私の頭はパンク寸前である。
非常に困っていると、停学処分で、私と同じく二日間学校に来なかったという例の小田くんが、クラスメイトたちの群れを割って私の前に現れた。
「ララちゃんの魅力に皆気づいてしまったんだね。困ったな…
大丈夫、キミのことは俺が守るからね…!!」
そう言って私の手を取る小田くんに、私は嫌な予感がする。
ソッと私の手を、自分の口元に持っていこうとする彼にゾッとした。
「ちょっと…!」
「おい、ララに気安く触るなよ。」
小田くんの手から私の手を奪い取ったのは、零くんだ。
驚く程鋭く小田くんを睨み付けている零くんに、むしろ私はきゅんとしたのは内緒。
「零くん…!」
零くんや私の言葉に小田くんを含めた周りは驚きの表情を見せる。
あ、そうか。学校でお互いを名前で呼んだのは初めてか。
「ねぇ、今降谷くん、立川さんのことララって呼んだよね…?」
「立川さんも降谷くんのこと零くんって…」
「えー何?あの事件でむしろ二人は急接近…!?」
「付き合ったんじゃない??」
「うっそー!?降谷くんのこと、ちょっといいなって思ってたのにぃ…」
ざわざわと騒ぎが大きくなる中、小田くんはわなわなと震えだした。
「ララちゃん…まさか、まさか…!そんな、降谷零なんかと…つき、付き合ったりなんて…してないよな…!?」
「「……。」」
私と零くんはジトッと、小田くんを見る。
彼はやっぱり、私にとって苦手なタイプだ。
だって、零くんを悪く言うから。
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