勝手に決めないで欲しかった

毎度突然だが、もうすぐ体育祭である。
面倒なことこの上ないが、運動神経抜群な零くんの競技を見られるのかと思うと、正直悪くはない。
私はとりあえず零くんと諸伏くんを応援できればそれで良いのである。

体育祭の出場競技決めは、何となく小学校の時の劇の役割決めを彷彿とさせた。
とりあえず、私は楽そうな短距離走に手を挙げようか…なんて考えていたら、クラス委員長が高らかに声を上げる。

「立川さんと降谷くんは、お姫様運びに決定でいいですか?」
「…!?」
「お姫様運び?」

何故勝手に決める…それ以前に、お姫様運びってなんだ!?ネーミングセンスェ…

零くんも、お姫様運びが何なのか分かっていないようで、首を傾げていた。

「お姫様運びっていうのは、女子を男子がお姫様抱っこして、そのままゴールまで運ぶっていう競技らしいよ!」

クラス委員長が得意げにそう言って目を輝かせる。
私は(思春期の男女に何という試練を課すんだ!!)と教師陣に一言物申したくなったが、本当に物申せるはずもなく、黙り込むしかなかった。
ていうか、私重いですし。零くんの肩を壊しかねないですよね…。

「ダメだダメだ!!降谷零にそんないい思いばかりさせてたまるか!!」

小田くんが突然声を上げる。
しかし、それを零くんが絶対零度の視線で諌めた。

「俺は別にララとなら出ても構わない。」

すると、周りがヒューヒュー!と沸き立つので、私のテンションはだだ下がりである。
ダイエット…しなきゃかな…
大体、零くんがやるって言った時点で私に拒否権などないのだ。
悪夢再び。

「ララちゃんは嫌だよな?人前でお姫様抱っこなんて…!」

小田くんが懲りなくそう言う。それは大変助かるのだが、時既におすし…間違えた、遅し。

「ララはどうしたい?」
「零くんが…いいなら…」
「!そっか。ララと一緒の競技に出られて嬉しいよ。」

ほらぁーーーそういうとこだぞ零くん…
そういうとこだぞほんと…
私も嬉しいに決まってるでしょうが!!!!!
ダイエット応援してね!!!

小田くんは私の言葉にショックを受けたようで、黙り込んでしまう。
そろそろ君の存在も面倒くさいので、早く次の好きな人見つけてね。

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