昨日の現実
次の日昼休み、私は非常に後悔することとなった。
というのも、降谷零がジーーーーっとこちらを見てくるのだ。

明らかに原因は昨日にある。
遊びすぎた…と私はため息を吐いた。
今生の生活は常にいろんなことを想定して行動しなければいけないなんて考えていたはずなのに…

ただただあの『名探偵コナン』のキャラクターである、降谷零と関われたことがなんだかんだで嬉しくて、調子に乗ってしまった。

あ。そういえば、昨日のいじめっ子たちのことだが、一応先生に報告はした。
厳重注意で済んだみたいだが、反省はしているようなので、もうあまり関わってはこないだろう。

「なぁ。」
「っ…なぁに?」

ふいに声をかけられて、一瞬悲鳴を上げそうになったが堪える。
危ない危ない…
昨日、自分から頬にキスしておいて、動揺しているなんてバレたらカッコ悪すぎる。

「立川は、さ…」
「…?」

口を開けては閉じてを繰り返す降谷零。
そんなに言いづらいことなんだろうか?
私は首を傾げた。

「昨日の…キ…」
「……。」

そこまで言って頬を赤くする降谷零を見て、私は彼の言いたいことを察する。
昨日のキスに関して聞きたいのだろう。
"なぜあんなことをしたのか"的な。

「キッ…!!」
「おーい、ゼロ!」

私に顔を近づけ、必死な形相でそこまで言った降谷零。しかし、続く言葉は彼の親友である諸伏景光によって遮られてしまった。

「ヒロ……。」
「あれ?もしかして邪魔しちゃったか?」

降谷零は諸伏景光をジトッとした目で見る。それに対して諸伏景光はヘラッと笑った。

「おい、ゼロ。いつの間に立川さんと仲良くなったんだよ。」
「キミには関係ない。」

二人が話を始めるのをしばらく眺めていたが、私は"今って逃げるチャンスなのでは?"と思い至った。
私はお弁当を持ってそーっと教室を出ていこうとする。
が、それに目敏く気づいた降谷零は、私を呼び止めた。

「立川…どこ行くんだ?」
「今日は違うクラスの友達と約束があるの。」
「へー…」

そう言うと彼は納得したのか、諸伏景光との会話を再開させる。
諸伏景光も私をチラッと見たものの、特に何も言わずに私を見送った。
よし、何とか質問攻め回避…

私はそのまま校舎裏の花壇の方に向かったのだった。
7/22
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