芽生える想い
その日からというもの、降谷零は毎日のように私に声をかけてくるようになった。
「おはよう。」から始まり「またな。」で終わる。
そんな毎日が、なんとなく嬉しくて。
楽しくて。
かけがえがないものだと思うようになった。

それが、いいか悪いかは別として…

降谷零と関わることが、果たしてどんな未来に繋がっていくのか。今の私には想像もできない。
けれど、これだけは分かる。
私にとって彼が、ただのキャラクターでは無くなってきていること。

…彼を、人として好きになりかけていること。

身を滅ぼすかもしれない。彼の重荷になるかもしれない。
それでも、この気持ちは止められなかった。

「おはよう。」
「降谷くん…おはよう。」

今日も挨拶をして1日が始まった。
それだけで満足なはずなのに、日に日に欲は深まっていく。
最近では、自分が怖い。

私が本当に彼の言う大人だったら…
全てをかなぐり捨ててでも彼を拐い、二人で遠くまで逃げてしまうのに。

私は隣に座る降谷零を見つめる。
目は口ほどにものを言うというけれど、彼を見つめる私の瞳は、平常を保てているだろうか。
いや、保てていなかったようだ。
だって、私を見る彼の瞳が、驚きで見開かれていくのだから。

「どうした?立川…?」
「いいえ、何でもないの。何でも。」
「そうか…?」

腑に落ちない表情で、私を見る降谷零。
しばらくその視線は注がれ続けたが、私はそれに気づかないフリをした。
9/22
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