10.土曜日は有頂天





ついにやってきた土曜日。

ギリギリまで服に悩まされ、友達の力を借りてどうにか選び、『どうせ明日の朝髪の毛いじったりするんでしょ!だったらもう寝なさい!』というアドバイスに従い、なんとかどうにかなった……けど……

「……やっぱ自信ない……」

「何が?」

「っわぁ!あ、お、おはようございます……」

いつものごとく後ろから声をかけられ、振り返った瞬間。
わたしは言葉を失った。


「……かっこい……」


薄手のストライプのTシャツにカーキのカッターシャツを羽織り、捲った袖からは程よく筋肉のついた男の人らしい腕が覗く。
黒い細身のズボンがマサアキくんの脚の長さをより一層引き立てる。

……こんなの、きいてない……

てか、ただの(……いや、ただのじゃないけど)勉強会にワンピースにカーディガンなんて格好で来るとかなんか……あれだったかな……なんて思っていると。


「……なんかついてる?」

「っあ!いや、違います、その……私服、かっこいいな、って思って……あ」


うわああああああああああ!!!!

何を!口走ってんの!あほか!いきなりこんなこと言われたら!ドン引きだよ!あほか!今日は勉強会だっつの!!

「ご、ごめんなさい……行きましょうか」

逃げるように図書館の入り口に向かおうと、ちらりとマサアキくんを見た。


「……どうしたんですか?」

「っあ、いや、その……なんでもない、大丈夫。行こっか」

口元に手を当て斜め下を見ながら悩んで……いるように見えた。
けど、声をかけるとぱっと戻った……から大丈夫かな。





「……うぅ…………さっきの問題はわかったのにぃ……」

「ん?……ああ、いいとこまでいってんじゃん。あとは、これを使って……」

「……!そういうことか……っあ、解けた」

「偉いじゃん。ほい、次」

図書館2回の学習スペースで、夢のような時間が過ぎていく。
ああ、こんなに幸せだとばちが当たりそう……

「ってか腹減った……ここって飲食オッケーだよね」

「はい。学習スペース内ならいいって書いてあって」

「じゃ、なんか買ってこよっかな……あれ、花純ちゃん行かない?」

「あ、いちおうおにぎりとお弁当作ってきて……」

といっても、ほぼお母さんの助けがあったからだけど。

「え、すげー……偉いね、休みの日まで」

「いえ、そんな……お母さんのおかげなので」

「そうなの?でも偉いよ。……てかすげー美味そう」



「……あ、の」

…………ここで勇気を出さなくてどうする。
どうせ金輪際勇気なんてなかなか使うことは無いぞ!行け!わたしっ……!


「ま、マサアキくんの分もいちおうありますけど……よかったら、食べますか!?」

ギンガムチェックの包みを差し出す。
お弁当を掴む手が震える。


「……え、いいの?」

「っ!も、もちろんです」

「ありがと!有難くいただきまーす」

「〜っ」


お母さん、本当ありがとう。
わたし、今、嬉しすぎて泣きそうです。



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