09.約束は突然に
「―――――で?最近どうなの?」
「へ?な、んで、急に?」
こんな脈絡ない話の振り方するなんて、珍しい、なんて思っていたら。
「何とぼけてんの。マサアキのことに決まってんでしょ」
「っま、マサアキくんって、なんでっ、」
とんでもない爆弾が落とされた。
「なんでって。最近すみマサアキといい感じじゃない」
「っい!?待ってよ、そんなこと無いから、わたしはただ、」
「でも普通ただの女友達にこんな親切にする〜?」
「無いね。絶対無い」
「そんなことないもん!マサアキくん優しいし」
「「ふ〜〜〜ん」」
「〜っ!!!」
そりゃあ確かに、高3の時気になりはしたよ!したけど!
……だけど、実際、マサアキくんが数学を教えてくれる木曜日の放課後を楽しみにしている自分がいる。―――あれから次の週も当然のように誘われ、あれからずっと数学を教わっているのだ。
「…………で、ここは……」
皮肉なのか何なのか、友達にからかわれた今日が木曜日。……なんだかいつもより集中できない……
ふ、と顔を上げると、熱心に説明するマサアキくんが目に映る。
伏せられたまつ毛は夕陽を受けて金色に輝き、筋の通った鼻に影がかかる。
形の良い唇が、あの心地良い声を紡ぎ出す。
かっこい……
「……。……、ぉぃ、おーい。桂木サン。花純ちゃーん。戻ってきて〜」
「っあ」
ごめんなさい、と謝るとまたひとつ爆弾が、
「なーに、見とれてた?」
呆気なく投下される。
……っままままままって、
一気に顔に集まる熱、喉に貼りつく声。
さ、さすがにばれるって……
「まあいいけど。……そろそろテスト前だし、今日できてなかった分、補習な」
「……っえ、ほ、補習?」
そんな時間あるの、と思ったけど、さっき言ってた通りテスト期間に入るから今週の土日から部活がオフになるんだ。…………ん?土、日?
「…………あの、土日、って」
「ん。土曜に、市立図書館。8時ね」
「っえ、」
それって、
目的はデートじゃないけど、
まって、
「うそ……」
嬉しい、かも。