11.波乱の夏……かも
「数学の、テストで、89点……」
うっそ。
ありえない。
いつも数学は平均点切ってるわたしが。
こんな高得点叩き出すなんて。
「今回の平均点は56点。まあまあ難しめだったな……80点以上はクラスで5人、90点越えは学年で8人だ」
……うっそ、クラスで上位5人になれるなんて。今まで数学なんて下から5人とかだったのに……
「萌ちゃん、安紀ちゃんっっ」
放課後、あまりに嬉しくて二人の所に駆けて行った。
「うぉ、どしたの、元気いいね」
「はじめて!!!数学で!!平均こえたよ!!」
「へぇ……って、89点!?すごいじゃん」
「すみちゃん、数学苦手だったのにねぇ」
えらいえらい、と頭をぽんぽんされる。秀才二人に褒めてもらうのって嬉しいな。
「お、花純ちゃん、89点?やるじゃん」
「っわ、マサアキくんっ!……あ、その節は、本当にお世話になりました……ほんとに、マサアキくんのおかげです」
「いや、俺は何もしてないって……」
すると、わたしの気持ちを知ってる二人が、
「まあでも、こんな点数取れるなんてすごいことじゃん」
「マサアキくん、褒めてあげたら?」
なんて、フォローなのかよくわかんないことを言ってきた。
…………ってえええぇぇぇぇぇぇ!?
「いや、ほ、褒めるだなんて、……っていうか、マサアキくん絶対学年上位8人の中の1人ですよね!?」
「マサアキのことだしどうせそうでしょ」
「だったらなんでそんなこと言うのあきちゃあああん」
そんなことを言い争って(?)いると。
「まあまあ。……花純ちゃん、よく頑張ったね。次も頑張ろ」
……えと、この手は。
ハイタッチ、ってこと?
恐る恐る手を出して、思い切ってぱちん、と手を叩く。
「……はいっ!」
長かった梅雨が終わり、窓の向こうには綺麗な晴れ空が広がっていた。
思わず零れた笑みが、虹を連れてきてくれそうだ。
「……最近、あいつ何なの」
「それな〜、マジうざいんだけどww」
不穏な雲が遠くに渦巻いていることも知らずに。