03.再会
桂木花純。
ごくごく普通……じゃないけど、まあどちらかというと陰キャよりな高校3年生……のはずだった。
……今日から、高校1年生、です。
軽く3年は来た校舎に『新入生』として入る。
まだ綺麗で真新しい制服に上履き。……わかっていても嬉しいもんだなぁ、これ。
謎の感慨に耽りながら入学式の行われる体育館に向かっていると、
「〜っ、すみ!」
だいぶ聞き慣れた声が後ろから迫る。
「!っわかちゃん」
振り返れば、我が友―――鈴木和花の姿があった。
わたしの数少ないヲタ友……だけど、たしかわかちゃんは高校で出来た友達、のはず。
……ってことは、
わたしはわかちゃんを引き連れ、誰もいない廊下で声を潜めて言った。
「……わかちゃん、へんなこと言ってもいい?」
「変なのは元から」
「失礼な……っあのさ、わかちゃん、高3の記憶って、あったりする……?」
「……まさか、すみも?」
「「〜〜〜っ」」
いつもの事ながら、お互いに感動して熱い抱擁を交わした。
「よかったぁ、記憶あるとかないとかいうから、誰が記憶あんのか不安だったんだよね……」
「っえ、どゆこと?」
「え、わかちゃん、女神さまから話聞いてないの?」
「……ついにおかしくなった?」
「失礼なっ!!!……どゆことだ」
……まさか、女神さまが干渉したのはわたしだけで、ほかの人は……全く事情を知らずに戻った、ってこと?
「……わかちゃん、なんとなく解決した」
「ならいいけど。あ、そろそろ時間ヤバい」
「うそっ、急ご!」
『世界がわたしを中心に回っている』
なんて自己中な言葉だと思っていた、けど。
……案外有りうるものだった。
その後も入学式でそれとなく探ってみたけど、仲のいい友達何人かは記憶を持っていて、やっぱり謎の女神さまのことは知らないみたいだった。
桂木花純。
結構なヲタク気質だと思う……自覚はある。
わたしと同じヲタ友が鈴木和花。
共通の趣味を持つだけの友達だったけど、困ったときは力になってくれる、気がついたらとても近い友達になっていた。
それから、高校3年生のときに仲良くなった高野梨紗。
内気な性格故に一人でいるわたしに声をかけてくれて、いつもそばにいてくれた大事な友達。……高3にもなって友達作りに苦労するわたしって……
あとは、部活でわたしを助けてくれた白石萌、小林安紀、部活の先輩の岡紗由里先輩。
合計5人。これが記憶を持つ人だった。
別に5人しか気の置けない人がいない、ってわけじゃない。
部活とかで仲のいい人はもっといる。
ただ、この5人が格別仲が良かった……ってことかな。
……本格的に、世界がわたしを中心に回りだした。
笑えない冗談のような現実に、入学式の途中だからか、気が遠くなってきた。
……もう1人、記憶を持つ人物がいるとは知らずに。
桂木花純(デフォルトはかつらぎ かすみ です)
クラスのはじっこにいる系女子。
友達はいるけどよくはぐれてぼっちになる。
鈴木和花(すずき わか)
花純の良き親友。ヲタ友でもある。
高野梨紗(たかの りさ)
和花とはまた違うタイプの良き親友。いつも側にいてくれる。
白石萌(しらいし もも)
花純が副部長だった頃、よく相談にのってくれた。優しい親友。
小林安紀(こばやし あき)
花純が副部長だった頃、一番近くで助けてくれた。頼れる親友。
岡紗由里(おか さゆり)
ポジション(パート)が違うにも関わらず花純のことを目にかけてくれた先輩。
???
大分(?)後で出てきます……
このお話では皆様が想像しやすいように、敢えて3年生だった時の部活などを特定していません。ですが後に話の展開上いろいろと設定に制約がかかることもあるかもしれません。ご了承ください。