Dream in Dream

12side Emma

宮廷使用人から、姫君の使用人に昇格し、初めての相手がカノン様だった。

カノン様も、昇格したてで不安な私と同じように、不安な気持ちを持っていた。けれど、それ以上に、相手を思いやる優しい心を持った人物だった。

護りたい、この姫君を。
たとえ、何に代えても。

心からそう思った。


「……ん……」

愛らしい寝顔を眺めながら和んでいると、来客を知らせるベルが鳴った。
……ただの直感だけど、嫌な予感がする。

「メル、リカ、カノン様のお側についていて」

「「はっ」」

他の部屋の使用人に言いつけ、ドアの前に立ち、

胸のブローチに手をあてた。

モルガナイトが淡い光を帯びる。


『魔法』を使って、相手には気づかれないよう最大限自分の五感を研ぎ澄ます。

ドアの向こうにいるのは……トーラ様とマーサ様。……その手には、睡眠ガスと筋肉弛緩剤入りのガス。大方、部屋の使用人を油断して眠らせ、ここに来たってところだろう。

……カノン様の一日を邪魔するため。

ドアをゆっくり開け、ガスが噴射―――される前に、二人の手を瞬時に縛る。

「―――何か、御用かしら?」


「全使用人に告ぐ、只今トーラ様、マーサ様がカノン様に危害を加えに来た。至急取り押さえよ!」

使用人用内線でそう言えば、ものの2分しないうちに二人は捕まった。
うちの使用人を舐めないでほしい。
この宮廷には、ただじゃ仕えることなど出来やしないんだから。


「……で、何が目的で?」

「…………知らないわよ」

「……」

あくまで口を割る気は無いらしい。

私は手に持つ箒で床をダン!っと突いた。
床の大理石が割れる―――幻覚を見せただけ、だけど。

「そんなに命が惜しくないならどうぞ、ご勝手に」

そう言って身を翻した瞬間、

「〜〜〜っごめんなさい!!!」

簡単に手のひらを返した。

「私たち、頼まれたんです……」

「誰に?」

「……し、シャーロットさん、に」

「お願いですから、シャーロットさんには言わないでください!」

「お願いします……こんなことをしておいてお願いするのは筋違いだってわかってるんですけど、」

「大方、家柄か何かで脅されているんでしょう?」

私がそう言うと二人はこくこくと頷いた。

「……一応、これを渡しておきます」

「証拠の、シャーロットさんに言われた時の録音です」

「そう。預かっておくわ」


それから二人は『やはり自分は婚礼の儀には臨めない』という『個人的な理由』で去った……ことになった。

「エマさん」

「あら、ミカさん」

ミカさんはシャーロット様のお付の人だ。

「……やはり、マーサ様とトーラ様がお帰りになることを知ったとき、舌打ちして『……使えない奴』と言ってましたわ、凄い形相で」

「……そうですか。他の使用人にも伝えておいてください」

「ええ。……今後、何もなければいいのですが」

「……」


使用人の朝は早い。
何たって、我が姫君を守るためだから。


「……おはようございます、カノン様。朝ですよ」

「…………ん……おはよ、早いね、エマ……」

「……ええ、まあ。ちょっと、ネズミが二匹、出たもので」

今日一日は、絶対に邪魔させない。
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